髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革
「完璧なルックスとプロポーションをお持ちだったケイリー様が、知らないのも無理はありませんわね。結構みんな必死ですのよ?」
「ははっ、何それ」
少しだけ目尻に溜まったものを、ケイリーが指で拭った。その手をルシアナは自分の両手で包み込む。
「隠しても隠さなくても、ケイリー様は素敵です。ケイリー様が自分に自信を持てて、心が楽になる方法を選んで下さい」
「楽になる方法……。それを選んでもいいのか……」
「もちろんですわ。オシャレとはより自分を好きになるためのものです。誰だってしていることですもの。ケイリー様がして悪いはずなどありません」
美に固執すぎるのもまた良くないが、程よく身なりを整え着飾ることは、心にとってプラスに働く。自信を与え背中を押してくれる。
それがオシャレをすることの意義だと、ルシアナは思っている。
「ルシアナ……ありがとう」
二度目のハグは、辛いものでなくてよかった。
ぎゅうっとキツく抱き締められる心地良さに、ルシアナはしばらく身を委ねた。
「さてと……」
あんまりのんびりはしていられない。ルシアナだってまだ、自分の支度が残っているのだ。
「ケイリー様がわたくしに並ぶにふさわしい男になったところで、改めて言うことはございませんこと?」
ツンっと鼻を尖らせて聞くと、ケイリーはぷッと吹き出した。
「ははっ。本当に君、いい性格してるよ。……でももう、相手がいるんだろう?」
「その話でしたら、ここへ来る前に断りを入れてきましたわ。お相手の方はどうやら、わたくしのような高飛車で出しゃばりな女はお嫌いなようですもの。断られて今頃、安堵しているくらいでしょう」
別にパーティーでエスコートしたからと言って、どうこうなる訳ではない。
最初の一曲目さえ一緒に踊れば、お互い別の人と踊ってもいい。
それでも周りからみると、あの二人いい感じなのかしら? と思われなくもないし、親交が深まることもよくあるので、出来ればタイプの女性をエスコートしたいと思うのが普通だ。
「ですから……わたくしを寂しい女にしないでくださいませ。お待ちしておりますわ」
ニコッと微笑んでから、返事を聞かずに部屋を出た。
ケイリーを急かしたくはない。
決意を固めるまでに時間が必要なはずだから。
でもきっと、来てくれる。
信じてる。