髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革

「ルシアナ……」
「来て下さると思ってましたわ」

 彼女の顔を見ると、不思議な程に力が湧いて動悸が治まってきた。自分に『大丈夫だ』と暗示をかけるよりも、余程効果がある。

「来なかったらどうするつもりだった?」
「一人で道化のように踊ってやるつもりでしたわ」
「あはは。それなら勇気をだして来てよかった」

 二人でしばらく笑いあっているうちに、いつの間にか手汗が引いている。
 先程までの恐怖は、もう感じない。

「改めて……ルシアナ嬢」

 ケイリーは笑いを収めると、ルシアナの前に跪いて手を差し出した。
 本格的に社交界へ出る前に引きこもってしまったケイリーだったが、こういった場でどう振る舞えばいいのかは分かっていた。
 式典や祭典などの行事や、王宮に来た人達との交流……以前は光ある所で、常に人々の注目を集めてきたのだ。自然と動作が身に付いていた。
 
「今日は僕に、貴女をエスコートする名誉を頂けませんか?」
「……もちろんですわ」

 はにかんだルシアナの顔は、うっすらと桃色に染まった。
 いつも自信に満ち溢れたルシアナが、こんな照れくさそうな顔もすることがあるのだと知って嬉しくなる。
 重ねられたルシアナの手を引いて思わず抱きしめたくなったケイリーだが、舞踏会の始まりを告げるファンファーレが、ホール中に鳴り響いた。

「さあ、行こうか」
「ええ」

 ホールの前方、数段上がった場所には、王と王妃――つまりケイリーの両親と姉のベアトリスとが、会場を見渡すようにして座っている。
 名前を呼ばれたデビュタント達が次々とホールの中央へと並ぶ中、ルシアナも他の令嬢と同様にケイリーのエスコートを受けながら並んだ。
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