髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革
「申し訳ありません、陛下。うちの娘ときたら」
「なんだって貴女はいつも……! きちんと躾直しますので、今日のところはどうか御容赦を」
国王夫妻の側でルシアナの話を聞いていたベアトリスが、くすくすと笑いながら進み出てきた。
「お父様、お母様。私もルシアナの意見に同意します。私たちはもっと自由にヘアスタイルを楽しむべきです。私もこのパーティーが終わったら、少し短く切ってもらおうかと思っているくらいですもの。新たな自分に出会える予感にワクワクしています」
「あらあら、うちの娘のハートをすっかり掴んでしまったみたいね」
コロコロと笑う王妃に、ベアトリスは口角を上げた。
「ルシアナにハートを掴まれた者が、他にもおりますよ。お父様、お母様」
「おや、誰だい?」
「もしかして、そちらの男性ではない? 踊っている時から気になっていたのよ。会場にいる女性たちの視線が釘付けになっていたわ」
国王夫妻――ケイリーの両親は、ルシアナをエスコートしていたのが自分の息子だとは、まだ気づいていない。
最後に両親と顔を合わせたのはいつだったか。
引きこもってからというもの最初の一、二年はよく部屋へと様子を見に来てくれていたが、一向に良くなる気配のないケイリーに、両親は手を差し伸べることをやめてしまった。
ケイリーの他にも、二人の息子がいる。
当然と言えば当然だったのかもしれない。
わざわざ病んだ息子に時間と手をかけなくても、まだ二つの希望があるのだから。
明らかにムッとしたルシアナの顔を見て、ケイリーは逆に落ち着きを取り戻した。
薄暗い闇に心が引きずり込まれそうになっても、ルシアナがいれば大丈夫だ。
「堪えて」
「ですが……」
ルシアナは皮肉の一つや二つ、言ってやろうと思ったのだろう。でも、ケイリーにはその気持ちだけで十分だった。
「ご自分たちの息子をお忘れになるほど、月日が流れてしまっていたのですね。随分長らく、僕は病に伏していたようです」
「息子って……まさか、ケイリー? ケイリーなの?!」