髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革
置き去りにされたウィンストンはすぐに追いかけることもせず、なおもケイリーに話しかけてきた。
「いやぁ、困った女ですよ。自分の部が悪くなるとああですからね」
不満を垂れながらもベロニカの様子を伺っているウィンストンは、チラチラと視線を他所へと移している。
素直に追いかければいいものを。
ベロニカの後を必死で追い掛ける姿など、絶対に人に見られたくないとでも言いたげなウィンストンの様子に、ケイリーは笑いすら込み上げてくる。ルシアナに至っては肩を震わせていた。
「おい……なんだよ……」
一人でいるベロニカに、早速若い男性が声を掛けているのが人混みの隙間を縫って見えた。ベロニカは差し出された手を取ると、人々が踊るホールへと入っていく。
婚約者のいる女性が、他の男性と踊ってはいけないなんてことはない。だが普通、エスコートをしている男性を介して女性に聞くものだ。
すっかり取り残されてしまっまウィンストンは、鼻をふくらませながら「失礼」と短く言うと、どこかへ行ってしまった。
「ぷっ……くくくく……っ!!」
噴き出したルシアナにつられて、ケイリーもぷっ、と息を漏らしてしまった。
「一人でいるお姉様を、男性たちが放っておくわけないじゃない」
「そうだね。さっきも言ったけど、ベロニカ嬢はより美しい女性になられていて驚いたよ。ルシアナ、君のおかげなんだろう?」
ベロニカも自分と同じように、ルシアナが変えてくれたに違いない。そう考えたケイリーにルシアナは首を横に振った。
「違いますわ。わたくしはただ、髪の手入れをして差しあげただけですもの。あれはお姉様が本来持つ美しさです」