髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革
「何をしてらっしゃるじゃないわっ! 全部聞きましたわよ! 酷いではありませんか」
「君は……ベロニカの妹君、ルシアナ嬢かな?」
「ええそうよ」
「盗み聞きした挙句に非難してくるとは。そちらこそ酷いではありませんか」
「なんですって?」
「ルシアナ嬢、あなたはまだ子供だからきちんと理解出来ず心の整理が追いつかないのかもしれないけれど、我々貴族の間の婚姻などそんなものですよ。愛だの恋だの、そんな甘い幻想を抱いての結婚など全く持って馬鹿馬鹿しい。そう思うでしょう? ベロニカ嬢」
「あ……ぅ……」
ルシアナと同じ翡翠色をした瞳からボロボロと涙が零れ、唇を震わせている。
お互いに好きあっていると思っていたのに、相手からはただのビジネスだと思われていただなんて。
でもきっと、お姉様が一番傷付いているのはそこの部分じゃない。お姉様にだって多少なりとも政略結婚の覚悟はあったはずだ。
「貴族の婚姻がどんなものなのか、そのくらいは分かっていますわ。けれどお姉様の悪口を言っていたのは聞き捨てなりません」
「悪口?」
「頭がジャングルだとか、いも女だとか。それに我が家が貧乏だって話も聞こえましたわ」
「はっはっはっ! それは思い違いだよルシアナ嬢。悪口じゃない。ただ事実を述べただけさ」
うううううっっ!! あったまに来た、この男ーーっ!
怒りで頭に血が上るルシアナに、ウィンストンはニタニタと下品な笑みを浮かべてなおも喋り続けている。