髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革

「まさかルシアナお嬢様にこんな特技があるとは思いもよりませんでした」
「うふふー。宜しければ皆様の髪の毛、このルシアナ・スタインフェルドが銅貨1枚でカットして差し上げますわ!」

 技術を提供するのだから、もちろんお金は頂く。でも町中の理髪店よりずっとお安い。日頃の感謝価格という事で。

「僕切ります! ルシアナ様、お願いします」
「俺も!! 団長みたいなワイルドな感じで!」
「はいはい、順番ね」

 これはルミナリア公爵家の騎士団がオシャレでカッコイイと評判になる日も近いかも?
 鼻歌混じりに騎士達の髪の毛をカットしていくルシアナ。6人目を切り終えたところで流石にちょっと疲れてきた。身長的にはもう大人の女性と変わらないが、体力や集中力が追いつかない。
 
「今日カット出来なかった方は、改めて時間のある時に施術させていただきますわ」
「いゃあ、いつでも大歓迎ですよ」

 これまでとは全く違うヘアスタイルに、騎士達はキラキラと顔を輝かせている。
 やって良かったわ。
 ルシアナも思わず笑みがこぼれ、心がほっこりしてくる。

「団長! 第4隊ただ今戻りました!!」

 後ろに荷馬車を連れた騎士達が団長の方へとやってきた。荷車に積まれたものを見ると生き物の死体が山積みにされ、ぷぅんと生臭い匂いが漂っている。

「討伐ご苦労だった」

 労いの言葉をかけられた騎士は、あんぐりと口を開けて団長の頭を見つめている。

「だ、団長……その頭は……」
「どうだ? 似合うか?」

 今来た第4体隊長は、ルシアナがカットしたことを知らない。ルシアナに気を使わずに本音を言ってくれるかも、と思うと緊張が走った。

「いいですね、その髪型! どこの理容室で切ったんですか? 紹介して下さいよ」
「そうか? そうだろ? 実はルシアナお嬢様に切ってもらったんだ」
「お嬢様がっ?!」

 褒められて嬉しいルシアナは、腰に手をあてて頷き返した。
 
「まあその話は後だ。それで、報告は?」 
「報告致します。死者は0、負傷者3名のうち傷の深い1人は今、医師に治療してもらっております。討伐した魔物の内訳はランドコニー5匹、カルセドニーウルフ7匹、スクィッドスネーク1匹、以上です」
「カルセドニーウルフが7か。なかなか良い収穫だったな」

 団長が荷車に乗せられている茶灰色の斑模様をした魔物を見て満足気に頷くと、帰ってきた第4隊の隊長も同意するように頷き返している。

「ええ、早速捌いて魔石を取り出して参ります」
「うわぁーっ! 魔物をこんなに近くで見たのは初めてだわ!!」

 2人が会話している所へ、ルシアナがひょこっと乱入した。普段大切に守られているせいで魔物を近くで見たことがないルシアナは、興味津々に荷車の中をのぞき込む。

「ああっ! ルシアナお嬢様、あまり近付いてはいけません」
「もう死んでいるのでしょう? なら危なくないじゃない」
「それはそうですが……」
「魔石って心臓近くに入っているのよね」
「左様でございます。これから魔物達を捌いて中から魔石を取り出すんですよ」

 魔物は普通の生き物とはちょっと違う。
 体内に魔石と呼ばれる魔力を秘めた石があり、魔法を使って攻撃してくるのだ。普通の生き物より人に対して攻撃的で、かつ魔法を使ってくるので非常に厄介で危険な生き物だ。
 倒した魔物の肉や皮、そして取り分け魔石は高値で売れるので、魔物退治を生業にしている人もいる。
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