髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革

「カルセドニーウルフの魔石は魔力量が多いので特に高く売れるんですよ。そう言えば食堂のランプに使っている魔石が切れていると奥様が仰っていたので、一つ持っていったら喜んでいただけそうですね」
「ええ。仕方なくモニカが灯りをつけてくれていたけれど、ようやくその役目から解放されそうですわね」

 魔石に宿る魔力は、消費すれば当然無くなる。前世の世界風に言えば、電池みたいな感じだ。
 魔力がなくても魔石の魔力を使って、魔道具と呼ばれる道具を使うことが出来る。ランプはその最たる例で、最もよく使われる魔道具だ。

 食堂のランプが魔力切れで付かなくなってしまったのだが、うっかり在庫を切らしてしまっていたらしい。ここ最近はずっと魔法を使えるモニカにつけてもらっていた。
 魔力を消費するのに毎度つけて貰うのは申し訳なかったので、これで一安心だ。

 と、ここで、ルシアナの頭にL字型をしたあの道具が思い浮かんだ。風を吹き出す、あの道具を。

「魔法を使えなくても、魔道具なら使える……」
「お嬢様、どうかなさいましたか?」
「そうだわっ! 魔道具でドライヤーを作っちゃえば良いじゃない!! いい事思いついたわ。ありがとう!」

 騎士団長の手を握って御礼を言うと、今度はモニカを呼んだ。

「モニカ」
「はい、お嬢様。こちらにおります」
「明日街へ出掛けるから。準備をしておいてね」
「何を仰っているのですか。外出なんて出来ませんよ」
「え、何で?」
「お忘れですか? 明日は第一王子殿下がいらっしゃる予定ではありませんか」
「あ゛っ、そうだったわ」

 ベロニカの婚約者騒動で、ケイリー王子が来ることなどすっかり頭から抜け落ちていた。
 せっかくいいアイデアが思い浮かんだから、ドライヤーを作れないか魔道具工房へ行ってみようと思ったのに。
 舌打ちしたくなる衝動を抑えたものの、あまりいい表情をしなかったことはモニカにはバレバレだったようだ。

「第一王子殿下がらいらっしゃるのに、お嬢様はあまり嬉しくなさそうですね。王都では大人気だそうですよ」
「そうらしいですわね」
「そうらしいって、そんな興味無さそうに。お嬢様くらいの年齢でしたら、妃候補にあがってもおかしくはないのですよ。ご身分的にも」
「我が家との婚姻は『貧乏くじ』らしいわよ」

 はっきり言って今は、王子どころじゃない。
 今のこの公爵家の状況で、ルシアナが妃候補に上がる可能性は限りなくゼロに近い。そんな無いにも等しい可能性に時間を割くくらいなら、より希望のある可能性にかけた方が賢明というもの。

「まっ、いざという時は助けて貰えるようコネくらいは作っておいた方がいいわね、うん」

 人脈作りは大事よね。

 うんうん、と頷くルシアナにモニカは内心で拍手を送った。

(お嬢様の年頃ならば、甘い夢を見てもおかしくはないのに。現実をしっかり見据えられて、立派なレディに育ちましたね……)

 モニカが何を考えているのか何も知らないルシアナは、魔道具工房へ持っていくドライヤーの立案書を書く為に部屋へと戻って行った。 
 
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