髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革
 翌日の昼前に、ケイリー王子一行がルミナリア公爵邸に到着した。
 両親と姉とで馬車から降りてくる王子を出迎えると、中から現れた発光物にルシアナの目がチカチカとした。

 うひゃあ、これは凄いわ。

 少し癖のある髪はごく淡い金色。優しげな目元はルシアナとよく似た青リンゴ色で、上がった口角がいかにも人好きのする顔立ちだ。
 2つ年上だと聞いたが、背はルシアナとあまり変わらなさそうに見える。

「ケイリー王子、ようこそいらっしゃいました。家族一同歓迎致します。私はルミナリア公爵の息子サーマン・スタインフェルド、それから妻のオリビアに長女のベロニカ、そして次女のルシアナでございます」
「急な訪問にもかかわらず礼を言うよ」

 エクボがちょこんと出来るこの笑顔を見せられたら、ほとんどの人はコロリといってしまいそうね。
 キラキラとしたエフェクトでもかけたかのようなケイリーと握手を交わす父は、「滅相もない」と顔を綻ばせている。

「1、2週間ほど滞在したいと従者から連絡が来ましたが?」
「当初は通り道として一泊だけの予定だったけれど、折角の機会だからしばらく滞在させてもらうことにしたんだ。色んな場所に行き、多くを学んでくるようにと父も賛成してくれました」
「左様でございましたか。長旅でお疲れでしょうから、夕食までまずは、部屋でゆっくりとおくつろぎ下さい」

 よしっ!
 という事は夕食までは自由時間だ。
 街へ出掛けようとモニカに声をかけていると、部屋へと向かったはずのケイリーが横からひょこっと現れた。

「ケ、ケイリー様。どうなさいましたか? お部屋はあちらですが」
「ルシアナ穣だよね? 君、変わった髪型をしているね。そんなに短くしている貴族の令嬢と会ったことないよ」

 ああ、この髪のことか、とルシアナはふっと息をついた。

「長く伸ばすだけなんてつまらないですわ」
「つまらない……?」
「ええ。この髪型の方がよりわたくしの魅力を引き出せるかと思ったので、自分で切りましたの」
「自分でだって?」

 目を丸く見開いたケイリーは、次の瞬間には腹を抱えてくすくすと笑いだした。

「あはは……き、君、変わってるね!」

 ルシアナの冷たい視線に気づいたケイリーが、涙を指でぬぐって笑いをおさめると、眉を八の字に下げた。

「ごめん。気を悪くさせちゃったかな。いや、侮辱してるわけじゃないんだよ。僕の周りにはそんな突拍子もない発想をする人が居なくてさ。うん、それにその髪型、とっても似合ってるよ」
「そうですか……。わたくし、街へ行く用がありますので、これで失礼しますわ。また夕食の時に」

 セルフカットなんて、まず貴族の娘がする事じゃないから笑うのも無理ないわよね。
 貧乏極まれり。って思われたかも。
 まあ実際、財政難にあることには違いないからいいわね。
 気を取り直して出掛けようとすると、ケイリーがまた横から出てきた。
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