髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革

 主な魔道具といえば明かりをとるためのランプ、食材を冷やす冷蔵庫や冷凍庫、それから料理をするためのコンロだ。
 どれも生活をする上で重要な位置を占めていて、髪の毛を乾かすなんて作業は、他の物事に比べたら優先順位が圧倒的に低い。
 何もしなくても勝手に乾いてしまうものを、あえてわざわざ貴重な魔石を使ってまでする事では無いからだ。

 だからといって簡単に引き下がるルシアナではない。

「髪の毛が濡れっぱなしだと、キューティクルが開いている時間が長くなって髪の毛が痛むの。それに頭皮だって乾燥するのよ。ドライヤーを使って素早く乾かせば美しい髪を維持できますわ」
「はぁ……。髪の毛が痛むといってもなぁ」
「ドライヤーがあれば髪の毛のセット時間だって短縮出来ますのよ! ほら、女性は支度時間が長いじゃない?」

 貴族の女性だと湯浴みをしてから身支度を、なんて事はよくある。そうすると髪の毛が乾くまでに時間がかかるので、どうしても支度に何時間もかかってしまうのだ。ドライヤーがあれば寝癖がついてしまった時だって素早く整えられる。

 どう思う? と工房長が聞き耳をたてながら作業をしている職人達に顔を向けたが、皆一様に「さぁ」と首を傾げた。

「正直、髪の毛を乾かすとかどうでもいいですけど、どうしても作れと仰るのなら作ります」
「どうしてもよ! なるべく早くお願いね!!」

 仕方ないなぁ。とでも言いたげな工房長にちょっとムカッとしたルシアナは、語気を強めて言葉を返すと、令嬢らしからぬ足音をたてて工房を出た。

「どいつもこいつも……! 男は短髪だから大して気にならないのかもしれないけど、長い髪を綺麗に保つのって大変なんだから!」

 ブツブツと独り言を言って怒るルシアナに、後からついてきたケイリーが再びクスクスと笑った。

「なんです?」
「ルシアナ嬢は、髪の毛に並々ならぬこだわりがあるようだね」
「そうですわ。ヘアスタイルはその人の見た目を左右する、大事な部分でしょう?」
「うーん、確かにそうだけど。それってそんなに大事なことなの?」
「は?」
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