髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革
「ルミナリア公爵は領民と良い関係を築いているようですね。王都に流れてくるのは悪い話しばかりでしたので心配していたのですが」
「悪い話し? なんですの?」
「財政難で、領民は酷い暮らしぶりだと聞いておりました。冬になるとあちこちで凍えて飢え死ぬ者が転がっているとか」
「はっはっはっ……と笑っている場合ではありませんな」
快活な笑みが祖父の顔からフッと消えて、目を伏せた。
「あちこちで飢え死にとまではいきませんが、お恥ずかしい話し、民の暮し向きは良いとは言えませんのでね。儂の祖父がルミナリア公爵の位を授かってからこれまで、領地運営の才のある者に恵まれなかった。今は息子が頑張ってくれていますがね……。孫娘の婿にはバルドー家の三男を迎えて、少しは風向きが変わるといいとは思っています」
「婚約予定だとお聞きしました。あそこの一族はやり手だと、王都でも名が通っております」
「ええ。他所に頼るのは儂としても心苦しくはあるのですが、背に腹はかえられんでしょう」
やはりおじい様も、バルドー家の者を招き入れるのは不本意なのね。
しんみりなどしてはいられない。ルシアナは先日の夕食会からずっと考えていたことを口にしてみることにした。
「おじい様、わたくしずっと考えていたのですが、りんご酢をもっと全国に広めてみるというのはいかがでしょう」