髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革

8. ルシアナ、再び閃く

「ただいま戻りましたわ」

 少々疲れ気味に部屋へと戻ってきたルシアナは、くたびれたソファへと腰掛けた。

 これは名案だと思っていたのに……。

 りんご酢を広めよう! の案は、呆気なくボツになった。
 少しだけ湧いてきた希望があっという間になくなって、ルシアナの中にあったやる気が萎んでしまった。

「はぁぁ。なかなか上手くいかないものね。前世の知識でチート無双できると思ったのに。何の役にも立たないわ」
「ちーとむそうって何ですか?」

 モニカは顔を「お嬢様がまた訳の分からないことを口走っているわ」とでも言いたそうに、眉根を寄せている。

「何でもないわ。こちらの話し」
「そうですか……。そんなことよりもお嬢様、魔道具工房から頼んでいた品が届きましたよ!」
「えっ?! 本当? なかなか仕事が早いわね」

 早速渡された小包を開けてみると、ドライヤーらしき魔道具が入っている。
 風が出てくる本体は金属で持ち手は木になっており、魔石をはめ込む場所が設けられている。

「まだ試作品の段階ですが、一度お嬢様の意見を聞きたいとの事です」
「分かったわ。早速使ってみましょう。お姉様の湯浴みはまだよね?」
「伺ってまいりますね」

 モニカがベロニカの所へ行っている間に、ドライヤーを試してみる。
 注文通り、暖かい風と冷たい風のどちらも出るようになっており、風量も二段階だけだけれどちゃんと調節出来るようになっていた。

 「これよ、これ! いい感じだわ」

 りんごの活用については残念だったけれど、とりあえずやれる事から始めなければ。
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