髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革

 これからベロニカが入浴するということで、ドライヤーを持って浴室へと向かった。
 せっかくなのでドライヤーを試すだけではなく、髪の毛の洗い方もレクチャーしようと思ったのだ。

「お湯の温度はこの位。熱すぎても冷たすぎてもだめよ。熱いと頭皮が乾燥するし、冷たいと皮脂汚れが落ちないの」
「まあ、そうでしたか。ベロニカお嬢様は今の季節だと冷たい水で、冬だったら寒いとおっしゃるので熱めの湯で洗っておりました」
 
 ベロニカ付きの侍女ダフネが、ルシアナの用意した湯に手を付けながら温度を確認している。
 予め丁寧にブラッシングしてもらったベロニカの髪の毛を、桶に張った湯につけていく。

「予洗いはしっかりと。これだけでも半分くらいは汚れがおちますわ。髪の毛だけではなく、頭皮までしっかりとね。軽く水気を切ったら次はシャンプー。こんな風に頭皮近くで石鹸を軽くお擦り付けてね。強く擦り付けると髪が痛むし、石鹸がこびりついて流しにくくなるのよ」

 この世界には液体石鹸なるものはない。ルシアナも液体石鹸を作るためにはどうしたら良いのかなんて知識は持ち合わせていないので、固形石鹸での洗い方をレクチャーしていると、ベロニカが「ふうぅ〜」と気の抜けた声を出した。

「ルシアナ、あなた髪の毛を洗うのとっても上手ね。すごく気持ちがいいわ」
「うふふっ、そうでしょう? シャンプーには自信がありますの。さぁ次は酢水っと……。酢……?」

 なんで今まで気づかなかったのか。
 こんなに酢を活用する機会が日常にあるじゃない!!

「ルシアナお嬢様、どうかされましたか?」
「酢よ、酢!!! りんご酢を使えばいいじゃない!」
「え……りんご酢を使うのですか?」
「そうよ! ダフネ、急いでキッチンからりんご酢を持ってきて!」
「か、かしこまりました」

 りんごの良い活用方法を思いついてしまった。輸入フルーツになんか負けないんだからっ……輸入……輸入……。
 輸入品に押され気味で困っているもの、もう一つあったわ!!

「ダフネ、ちょっと待って!」

 急ぎ足で浴室から出ていこうとするダフネに声を掛けた。

「キッチンからあともう一つ、持ってきてもらいたいもの思いついたわ!」
「……?」

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