髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革

9. ルシアナ、行きたくもないお茶会に参加する

 姉の洗髪でいい考えが浮かんだ上、ドライヤーの手応えも上々。ルシアナは試作品を何度か使ってみて出した改善点を、魔道具工房へ伝えに行って帰ってきたところだ。
 鼻歌混じりに公爵邸へと入っていくと、エントランスホールに何人かの若い女性がたむろしている。

 ――ああ、『また』来てるのね。

「あら皆様、御機嫌よう」
「ルシアナ様、御機嫌よう。お出掛けなさっていたのですか」
「ええ。皆様は今お帰りになる所でしょうか?」

 先程通ってきた道では、ご令嬢達が乗ってきたと思われる馬車が出発の準備を整えていた。
 姉やケイリーと挨拶をしていた雰囲気的にも、帰るところだろうと思った。

「そうですわ。それではケイリー殿下、また機会があればお話しましょう」
「王子が社交デビューなさったら、是非パーティーでご一緒したいものですわ」
「本当、たのしみだわ」
「それでは殿下、それからベロニカ様も御機嫌よう」
「御機嫌よう」

 ホールから出て行く令嬢達を見送ると、ベロニカが「ふぅっ」とため息をついた。

「ケイリー様、申し訳ございません。次から次へと。これではケイリー様が休めませんよね」
「いや、構わないよ。僕も色んな方と顔見知りになれるしね」

 ぐったりとした顔で謝罪するベロニカに対して、ケイリーは疲労の色を一切見せず、余裕たっぷりに笑っている。

 ケイリーが公爵邸に滞在していると知った近くの貴族たちが、王子に挨拶しようと連日やって来ている。

 今日はベロニカと歳の近いご令嬢方が中心だったようだが、男性ももちろん来るし、時にはルシアナ程の年齢の子女を連れてやって来る者もいる。
 まったく、社交界にまだ出ていない王子と会う機会を逃すまいとする下心が見え見えだ。
 けれどケイリーは嫌な顔ひとつせず、キラキラしい笑顔を振りまいて相手をしているのだから、これにはルシアナも感服している。
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