髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革
「カジノリゾートねぇ……。発想自体は悪くは無いと思うけど、農業は『食』を生み出す産業だ。暮らしの根底を握る重要な産業を捨てて、娯楽施設というのはいかがなものだろう?」
「もちろん全ての畑を潰すとは言っておりませんよ。私が言いたいのは、余剰分を潰せばいいという事です。輸入フルーツに押されて、りんごの価格は年々下がっている。つまり作りすぎて余っているということ。余っている分を潰したところで困りはしません。むしろりんごの価格は戻るでしょう」
「ふむ……確かに。畑を失った者はカジノで働けば良いしね。言っていることは理にかなっている」
「さすがはケイリー殿下、話しの分かる御方だ」
ウィンストンは満足げな様子で紅茶を口に含むと、更に話を続ける。
「このウィンストン・バルドーが、しみったれた田舎臭いルミナリアを変えてやりますよ。馬車がすれ違える広い道を四方にドーンと通して、風通しを良くするのです!」
「へえ、それは見物だね」
「カジノが出来た際には、どうぞご贔屓に」
ウィンストンの満面の笑みに、ケイリーもまたにこりと笑顔で返している。
「それで、ベロニカ嬢とはいつご結婚なさるのですか?」
「婚約式が2ヶ月後、結婚式はそこから更に3、4年後の予定です」
「貴方のことだからもっと早く結婚して、行動に移すものだと思っていたよ」
「私も早くにとは思ったのですが、来年には私の姉が結婚するもので。その後という事になったのですが、折角ですから結婚前に遊学でもしようかと思いましてね。4年もすればベロニカは成人しますし、調度良いでしょう」
「遊学、なさるのですか?」
ベロニカも今知らされたのだろう。目を見開いて、恐る恐るという風にウィンストンに訊ねたが、当のウィンストンはケイリーの方を見ながら話し始めた。
「物を売る仕事はよく手がけるのですが、リゾート開発はバルドー家でも初めてでしてね。あちこち勉強して回ってきた方がいいと父からアドバイスをもらったので、従うことにしたのですよ。急いては事を仕損じるものでしょう?」
「なるほど。思いつきで事を進めるには、大きな計画だからね」
「ええ、よく計画を練りませんと。そういう訳だからベロニカ、それまでに自分に良く似合うカツラを作っておいて貰うといい。式でカツラ姿を見た者たちが、君の美しい変貌ぶりに驚くようにね。ああ、そんな顔をしなくたって大丈夫さ。私も一緒に宣伝がてらにカツラを被ろう。われわれの式を見たら飛ぶようにカツラが売れるぞ! そうしたらカジノ開発資金も潤沢になる。はっはっはっ!」
なんにも……! なんにも面白くなんてなぁァァいっ!!!
頭の血管が切れるかと思うほど頭に血が上ったルシアナは、その後、お茶会がどう終わったのかよく覚えていない。