髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革

10. ルシアナ、迷う

 悪夢のお茶会から一夜明け、ルシアナはあてもなくプラプラと街を歩いている。

 リゾート開発? カジノ? ウィンタースポーツ??

 あの後ウィンストンは父に、遊学へ出ることとカジノリゾート計画について話したらしい。
 夕食の時間は重たい空気が流れて、誰も、一言も喋らなかった。
 婚約前から既に、スタインフェルド家はウィンストンの手中に収められたも同然だった。

「何が正しいのか分からないわ……」

 ルシアナはりんご酢を使ったヘアケア製品を世に広めて、ルミナリア地方を再建しようと考えていた。りんごの使い道が増えれば、ルミナリアはまだやれると思ったのだ。
 一方でウィンストンは、りんごのルミナリアからリゾート地のルミナリアにしようとしている。

 長閑なりんご畑の広がるこの風景が好きなのは、もしかしたらルシアナだけなのかもしれない。
 領民達は苦労してりんごを育てるよりも、カジノで働くことを望んでいるかもしれない。
 そう思うと、ルシアナのやろうとしていることは馬鹿げている。真に領民のことを考えるのなら自分達の感情など置き捨てて、ウィンストンの案に素直に乗るべきだ。

「この街もあと数日で見納めだ」

 黙々と考え込んでいるルシアナの耳に突然、ケイリーの声が聞こえてきた。

「ケ、ケイリー様。なぜこんな所に?」
「フラフラと出かけて行く君を見かけてさ。心配だったからついてきたんだ」
「ケイリー様に心配して頂かなくとも、きちんと護衛の騎士は付いてきてくれていますわ」

 子供だからといって一人で街を歩くほど抜けてない。一人になりたいから侍女は付いてきていなくても、きちんと出掛ける旨は伝えたので、護衛は何処かからひっそりとついてきてくれている。

「ホント君、可愛くないね」
「ええ、よく存じ上げております」
「…………」
「…………」

 なんか、言ってよ。
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