髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革
「明後日にはここを発つ予定なんだ」
「アルベリア伯爵の所へ行くのですか?」
「そう」
ケイリーはパンツのポケットからハンカチを取り出すと、近くのベンチに敷いて「どうぞ」と座るように促してきた。
一人になりたいのに……。
空気の読めない王子だと思いつつ、けれど少しだけ誰かと話したい気持ちもあったルシアナは、素直に座ることにした。
「わたくしは行ったことがないのですが、どんな所なのですか? 魔物が多く出ると聞きましたけれど」
アルベリア伯爵の領地は隣り合わせだが、行った事がない。
「うん、そうらしいね」
「そうらしいって、毎年避暑のために行っているのではないのですか?」
「伯爵のところはここよりもずっと、街の防衛がしっかりしているんだ。街や集落の周りは高い壁で囲まれて、飛行する魔物はともかく、普通の魔物は中へはそう簡単に入れないようになっている。こちらは魔物の出る数はずっと少なくても、防衛意識が弱いから、どちらが安全かと言われたら変わらないくらいじゃないかな。実際、毎年行くけど、危険な目にあったことはないしね」
飛行する魔物はそんなに数としては多くないし、きっと高台などに見張りが多くいるのだろう。
王子が避暑地としてルミナリアではなくアルベリアを選ぶくらいだから、安全面での心配はなさそうだ。
「そうなのですか……」
「もしかして、僕の身の安全でも案じてくれたの?」
イヒっとイタズラげな笑みを浮かべて、顔を覗き込まれた。
「ちっ、違います! なんで王子がルミナリアじゃなくてアルベリアを避暑地として選ぶのか、気になっただけですから!」
なんて自意識過剰な王子なんだろう。
自分の意思に反して、顔が一気に熱くなった。無駄に顔が綺麗だからやんなっちゃう。