髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革

「あーあ、それはね、アルベリアの方が道は整備されているし、栄えているからね。この辺りは公爵邸の近くだから整っているけど、ルミナリアのほとんどの道は舗装されてない地面がむき出しの道だった。でもアルベリアでは多くの道が石畳で美しく整えられているんだよ」
「そう……なのですか」
「それに街並みもこことは随分と違うよ。ここがルミナリア公爵の領土で一番大きな街なんでしょう? はっきり言ってこの程度なら、アルベリアで言ったらちょっとした町くらいのレベルだよ。王都に住む者がみたら、ここが主要地だなんて驚くだろうね。人の活気が全然違う。なんて言うのかなぁ。もっと熱を帯びてる感じ?」

 何だか泣きたくなってきた。
 アルベリアでは魔物が多く出る代わりに、魔石も多く取れる。生活には欠かせない魔石は一年中高く売れるので、アルベリアの領主も領民も潤っているとは聞いていた。
 けれど実際に話を聞いてみると、悔しくて、腹立たしい気持ちにすらなってくる。
 アルベリアはルミナリアの隣だ。人間が勝手に引いた境界線があるだけで、自然にはそんなものはない。冬は雪に閉ざされて気候だって似ているのに、魔物の出現率の高さだけでどうしてこんなに差ができてしまうのだろう。

「カジノリゾート……」
「ん?」
「カジノリゾートが出来たら、きっと活気のある街になるでしょうね。領民たちだって、華やかなカジノで働いた方が楽しいでしょうし」

 もしカジノが出来たら、豪勢な宿屋や飲み屋がずらりと立ち並び、街は一気に華やぐだろう。
 ウィンタースポーツを楽しむのなら、道具の貸出屋や施設の需要もある。
 街の様相が変わることを恐れて、しがみついてはいけない。大好きなルミナリアの民を、余所者に任せたくないなんてつまらないプライドで苦しめてはダメだ。

 ポタポタと瞳から、生ぬるい水滴が零れ落ちてきた。

「ごめん。ハンカチもう一枚、持ってないんだ」

 そう言うとケイリーは、ルシアナの頬を手で拭った。身長はほとんど変わらないのに、見かけによらず大きな手だ。

「勘違いしないでほしいのだけど、僕はルミナリアがつまらない場所だとは思っていないよ」

 返事の代わりにズビッと鼻をすすると、ケイリーは改めて街並みに目を向けた。
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