髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革

「ルミナリアは確かに田舎臭いところはある。けれど自然が豊かで水も空気も美味しいし、心が安らぐよ。なにより領民たちが穏やかでせかせかしてないし、優しいって印象を持ったね。都市部だと衛兵をあちこちに置いても悪さをするやつがゴロゴロといるけれど、ここはそんな事ないでしょ? こうして街歩きをしてもスリにあったり、見かけたこともない。物乞いもほとんどいないし、スラム街もない。珍しいよ」

 ルミナリアは貧しい。
 
 どこの家庭も大した蓄えはなく、いつ底をつくか分からない。そんな環境に置かれたら、普通は奪い合うものだ。
 それなのに、ルミナリアの民は心優しい。
 飢えている者には食べさせてやるし、家がなければ入れてやる。
 そうやってみんな、手と手を取り合ってなんとか冬を凌ぐのだ。
 だからルシアナをはじめとする公爵邸の者たちは、自分達の贅沢など考えない。少しでも領民たちの暮らしが安定するように、常に節制を心がけている。

 そんなルミナリアがルシアナは大好きだし、愛おしい。
 大好きな人達には、幸せであって欲しい。
 それがルシアナの1番の願いだ。

「領主に似て領民ものんびりし過ぎているのが、いけないところかもしれないけれどね」
「ええ、そうですわね」

 街の方へと目を向ければ、そこにはゆったりとした時間が流れる長閑な日常風景が広がる。
 店先に出した木箱に座って、欠伸をしながら空を見上げるおじさん。もう何十分も前から同じ場所で井戸端会議をしている女性達。道のど真ん中でけんけんぱをして遊ぶ子ども……。

 やはりルシアナのちっぽけな感情で、領民に苦労させるわけにはいかない。

「慰めて下さりありがとうございました。わたくし決めましたわ。ウィンストン様の案に乗るのは正直気が進みませんでしたが、わたくしも微力ながらリゾート開発の応援をしようと思います」
< 53 / 137 >

この作品をシェア

pagetop