髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革

「……決意を固めた矢先にこんなことを言うのは悪いんだけど、君にはもう一度よく考えて欲しい」
「え?」

 ケイリーが何を言おうとしているのか真意が分からず顔を見ると、真っ直ぐに瞳を見つめ返された。

「将来僕は、国の舵取りを任されるかもしれない。そういう立場にある者からの助言だと思って聞いて欲しい」
「は、はい」
「僕に限らず父も同じ考えだとは思うけど、自国の民には豊かであって欲しいし、幸せであって欲しい。多少の困難はあっても笑って過ごしてもらいたい」
「そうですわね。だから……」

 だからリゾート開発に領主家族一丸となって取り組むべきだとルシアナは言おうとしたが、ケイリーの人差し指で口を押さえ付けられてしまった。

「飢えないこと、住む場所があること、働ける場所があることは大前提として、民にとっての豊かさとは何か、幸せとはなにか。そこの所をよく考えて欲しい」
「民にとっての豊かさ……?」
「君の場合ならこのルミナリア公爵領の民のことさ。ずっと一人で考え込んでいるけれど、何を望み、どんな暮らしをしたいと思っているのか、決断する前にもっと民の声に耳を傾ける必要があるんじゃない?」
「――――!!」

 ケイリーの言うことはもっともだ。ルシアナの思いだけでずっと、どうするべきかを考えていた。
 このルミナリアの地は、ルミナリアに住む民のためにある。領主とはただ、それを統括する者に過ぎない。実際に暮らす者たちの声を聞かずして大事なことを決めるのは愚かだ。
 そうだった! と目を見開くと、ケイリーはニコリと笑った。

「分かってくれたようだね。さて、もうすぐここを出発することだし、家族へのお土産でも買おうかな。何にするか一緒に選んでくれる?」
「もちろんですわ。りんご酢は是非、王都にお持ち帰って宣伝をお願い致しますね。沢山お譲りしますわ!」
「ははっ、抜かりないお嬢様だ」

 まだどうするべきか決まったわけじゃないけれど、自分がまず何をすべきかはハッキリとした。

 ルミナリアの民の声を聞く。

 ルシアナがまずしなければならないことは、これだ。
< 54 / 137 >

この作品をシェア

pagetop