髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革
「ちょっとちょっと皆様! お葬式じゃあるまいし元気がありませんわ。今夜は無礼講よ。もっと元気よくっ! いつもの感じで!」
「ぶ、無礼講と言われましても……。なあ?」
「なんだってお嬢様がこんな所でお食事を?」
もっともな疑問に、ルシアナは「ふむ」と頷いてみせる。
「ならあなた達は何故、家に帰って奥様や子供たちと食事をしないのかしら?」
「そりゃあまあ、時には家族とじゃなく友人や気心の知れた仲間と飲み食いしたくなるから。ですかね」
「そうでしょう? わたくしも時にはこうやって家族という枠を、貴族という枠を外れてみたいんですの。だって人生を楽しむにはちょっとした冒険とか、スパイスが必要じゃない? そして今日この日が、わたくしにとっては初めて尽くしの大冒険! かしこまる必要なんてないんだから! さあ皆様、今日はわたくしの奢りだから、好きなだけ食べて飲んでちょうだい!!」
店中に聞こえるよう声を張り上げると、「おおーーっ」と歓声が上がった。
ふむ、上々ね。
子供がこんな所に来るんじゃねえとばかりに冷ややかな目で追い出されるかと思ったが、ルシアナの天性の明るさとノリでなんとか乗り切れた。
「うーん、最高に美味しいわ。このりんご酢の美味しさをルミナリア意外では知りていないなんて、本当に勿体ないわ」
「ルミナリア意外ではりんご酢を飲まないんですかい?」
「そうらしいわ。健康にだっていいのに。ああ、わたくしも早くそのシードルってやつ飲んでみたいわ」
「はっはっ、あと4、5年と言ったところですかな」
こんな調子で各テーブルを周り初めて1時間ほどすると、ルシアナはすっかり酒場に馴染んだ。
そろそろ本題といこうかしら。
「ねえわたくし、皆様にちょっとお聞きしたいことがあるの」
「なんですか? ルシアナお嬢様」
流石のルシアナも少し緊張する。ゴクリと唾を飲み込んで、上機嫌で酒を煽っているお客たちに尋ねた。
「もし、もしもよ。ルミナリアにカジノを作ってリゾート地にしようってなったら、あなた達はどう思うかしら」
「「「ル、ルミナリアにカジノぉ?!」」」
あまりの大きな声の塊に、耳がキーンとした。そして次の瞬間には酒場が騒然となった。
「カジノって、あのゲームに金を掛けて遊ぶやつだろ?」
「ルミナリアにカジノだなんて……リゾート地ってこたぁ、宿泊所を沢山作るって話しか?!」
「公爵様! ルミナリアにカジノを作る気なのですか?!」
みなの注目がルシアナから祖父へと移った。祖父がなんと答えるのか、固唾を飲んで待ち構えている。