髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革
「……分からん」
「わ、分からないって……」
「作ろうとしているのは儂じゃなくて、バルドー家の者だ。現状儂は、ルミナリアを立て直すにはその案を呑まねばならんと思っている」
祖父は眉間に皺を寄せて、深くため息をついた。
「バルドー家?」
「バルドー家ってなんだ?」
「お前知らないのかよ。バルドーって言やぁ、葉巻の輸入で知られている貴族だ。何でも領地を買い漁っているって聞いたことがある」
「その話なら知ってるぞ! 確かホルレグワス男爵だ。まさかルミナリアの地はホルレグワス男爵に買収されてしまうのですか?」
「買収ではなくバルドー家の者が婿入りしてくる予定なの。お姉様の旦那様としてね」
口に出すだけで苦々しい。
それだけルシアナはウィンストンが嫌いだ。
「カジノリゾートとして開発が始まれば、りんご畑を初めとして、あちこちの土地を整備されるでしょう。わたくしは皆様の本音のところを知りたいの。カジノリゾートとしてルミナリアを立て直すか、りんごのルミナリアとして生き残るか」
「りんごのルミナリアとして生き残ると言っても、どう生き残るのです? 南の国から次々と目新しいフルーツが入ってきて、りんごなんて売れやしません」
青年の発言に、店中の客が「うんうん」と頷く。
「それならわたくしに案がありますわ。でも、その案を実行する前に聞いておきたいの。本
当はみんな、リゾート地として華やかな場所に生まれ変わって欲しいのなら、わたくしのやろうとしている事は皆様を不幸にするだけですもの」
みんながリゾート地にして欲しいと思っているのなら、ルシアナも全力でウィンストンを応援するつもりだ。自分の感情なんて領民達の生活に比べたら、なんてことは無い。
「賛成でも反対でも構わないの。どう思う?」
それぞれが頭の中で色々と考えを巡らせているのだろう。なかなか誰も口を開かない中、すぐ隣に座っている初老の男性がボソリと話しはじめた。
「ワシの家は先祖代々りんご農家じゃ。それこそルミナリア公爵様がルミナリアの地を治めるようになったよりも、ずっと昔からなぁ。りんごの木だってずっと受け継いできた。それを切り倒されるなんて御先祖様になんと申し開きを……ワシは反対じゃ」
「うちもだ。うちのりんご畑は誰にもやらねぇ。子供同然に育ててきたんだ」
りんごの木伐採の危機に、りんご農園を営む人々が次々と賛同の声を上げる。