髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革
「お、俺は! 俺んとこはリンゴ農家じゃないが、この街で店をやってる。俺はこの街が好きだ。カジノなんてギラギラしたもんが出来たらって考えると……うーぅっ! クラクラしちまうよ。リゾート地に来るってんだから、上流階級の奴らが街を闊歩するんだろう? 俺はやだね。のんびりしたこの街が良いんだ」
「でもカジノが出来たら、たくさんお金を落としていってくれる」
「そうは言ってもなぁ。うちの領主様御一家は優しい方で恵まれているからいいさ。こうして俺たちと一緒に飲み食いして、腹を割って話そうとしてくださる。けど他のお貴族様はそうはいかねぇ。通り道にいた老人か歩くのが遅くて邪魔だからって、蹴り飛ばしたなんて話を聞いたことがあるぜ」
領民同士での対立はさけたかったルシアナは、話を聞きながら少し安堵した。
意見が真っ二つに割れてしまったらと気が気じゃなかったが、概ね領民たちの意見は一致した。
ルミナリアのりんご畑や街並みは守りたい。
けれど貧しいのは嫌。
「皆様のお気持ちは、よぉーく分かりましたわ。ルミナリアの地への愛が伝わってきて、おじい様なんて泣いてますもの」
領民たちの意見に耳を傾けていた祖父は感極まり、途中からボロボロと泣き出していた。
「みんな、すまんなぁ。儂が不甲斐ないばっかりに、こんな苦労をかけて。儂もこの地と民が大好きだ! それなのに、バルドー家に乗っ取られることになるとは……ううぅぅっ」
「おじい様、まだ乗っ取られてなんておりませんわ。まだ間に合います。涙を拭いてください」
祖父は隣に座っていた男性からハンカチを受け取り涙を拭う。 それを見ていた何人かがもらい泣きをして、今度は抱き合って泣き始めてしまった。
ああもう、泣いている場合じゃないのに。
でも、そんな祖父だから、ルシアナは放っておけない。
結婚すれば、ルシアナはいずれルミナリアを去る身だけれど、知らんぷりなんて出来ないのだ。
「このルシアナ・スタインフェルド、全身全霊をかけて、このルミナリアを守ると誓いますわ!」
「よっ! ルシアナ様ー! いいぞー!!」
もう迷うことなんてない。
領民達の賛同を得た今、ルシアナは激しい闘志を心に燃やした。