髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革
「どう? このヘアスタイル、わたくしに似合いませんこと?」
「……確かに。ルシアナお嬢様から受ける印象が柔らかくなったというか、ふわっと可憐な雰囲気が増したように感じます。それによく見たら面白いカットだ。こんなカット技法は見たことがない」
「そうでしょう? さあ騎士団の皆様、出番ですわ! 入ってきて」
ルシアナがパンパンっと手を叩くと、ドアから騎士達がゾロゾロと入ってきた。どの人も、ルシアナがカットを手がけた者だ。
「この方達もわたくしがカットしたのよ。カッコイイでしょ?」
ルシアナが見て! と騎士達を紹介すると、各々いらないポージングをキメてくれた。それをサンチェスは完全無視して、興味津々で髪の毛を見ている。
「ご自分でカットされたと仰っておりましたが、一体どうやったのです? 異国から学ばれたのでしょうか?」
サンチェスは完全に職人モードになった。
騎士達の頭を色んな角度から見たり触ったりして唸っている。
「そんなところよ。このヘアのカット方法、知りたい?」
「ええ、それはもちろん! ぜひ教えて頂きたい!!」
他の理髪師ならまだ子供で、しかも女のルシアナに教えを乞うなんて真似はしないだろう。
でも真面目で探究心のあるサンチェスならば、きっとルシアナだろうが誰だろうが、自分の技術の向上のために、つまらないプライドなど捨てて知りたがるだろうと、長い付き合いの中で踏んでいた。
「サンチェスさんにはこれから、わたくしが知りうる全てのカット技法とヘアスタイルをお教えしますわ! その代わりと言ってはなんだけど、わたくしのお願い、聞いてくださる?」
「お願い……ですか?」
「そう。サンチェスさんはルミナリアの理容師ギルドの長でしょう? 今から話す計画を、実行して欲しいんですの」
ルシアナの計画とはこうだ。
まずルミナリアの理容師ギルドに所属する親方達に、ルシアナ自らがカット指導する。
そして習得した技術を弟子に伝え、ルミナリアから新しいヘアスタイルを提案していくというもの。
ついでに理容師達にはルシアナ開発のシャンプー石鹸やりんご酢を使用したトリートメント、ヘアオイルを店で使ってもらい、まずはルミナリアの民に普及させようと思っている。
「……とまあ、こんな感じで、サンチェスさんにはこの計画の旗振りをお願いしますわ」
まだ開発途中のヘアケアアイテムを見ながら、サンチェスは目を白黒させている。
「またこれは、凄い革新的なものを作られましたね。ルミナリアの特産品を使われるとは、誠に……うん。さすがは公女様だ。ルミナリアの民のことを考えていらっしゃる」
「まだ開発途中だけど、出来るだけ急いで完成させるわ」
「かしこまりました。その計画の旗振り役は、このサンチェスが賜りましょう!」
「そう言ってくれると思ったわ! よろしくね」