髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革

 前世の世界では、当たり前にあったじゃない! あんず油が!!!

 あんずの種子からとるあんず油は、ヘアケア製品として椿油と並ぶ有名なオイルだった。
 椿はこの辺りの地域と言わず大陸でだっては見かけないけれど、あんずなら沢山ある。
 
「モニカ! 明日はあんず農家の所へ出かけるわよ!」
「は、はい……かしこまりました?」

 あんず油をベースに、アップルシードオイルを加える。これでルミナリア地方にしか出来ないヘアオイルが完成するはず!!

 ♢♦︎♢
 
 幾つかあんずを栽培している農家を訪ねて、どうにか食用に取ってあったあんず油を手に入れた。
 あんずを大々的に栽培している家は少なく、りんご畑の片隅などにちょこちょこっと植えでている事が多い。だから種から油が採れることは知っていても量が少ないからと、気にせず捨てていたらしい。
 領内でも何軒かある、大きめなあんず農家でやっとあんず油を手に入れたルシアナは、帰りの馬車の中でうっとりとオイルを見つめた。

「量は少ないけれど試作品を作れるくらいの量はあるわ。来年の収穫では、領地内の全てのあんずの種を集めてあんず油を作るわよ」
「それでは各地の搾油所に話を通しておきましょう」

 ルシアナの席の向かい側には、最近父がルシアナの仕事の手助けをするようにと付けてくれた、執事のルードルフが座っている。
 肩くらいまである髪の毛を後ろでぴっちり一つにまとめて眼鏡をかけている、超真面目な壮年男性だ。一つ命令すれば十の仕事をこなしてくれるそんな優秀な彼は、父の執事の息子なのだそう。

「ええ。本当は新たな搾油所を作りたいところだけれど、そんな資金は持ってないもの。軌道に乗ってきたら考えましょう。まずは領内の各地に、あんずとりんごの油を公爵家が買い取ると公示して。そこからわたくしの考えたレシピを元にヘアケア製品を作るのよ」
「となりますと、集まってきた油を加工するための作業所だけは、作らないといけないですね」
「場所と人員の確保、あなたに一任するわ」
「かしこまりました」

 あともう2ヶ月もしない内にルミナリアに雪が降る。今年は無理でも来年の冬は、各家庭に十分な蓄えを用意させてあげたい。
 絶え間なく燃やし続けられるほどの薪と、明日の分を気にしなくてもいいほどの食料と、そしてふかふかの暖かいお布団。

 絶対に、成功させてみせる。

 窓の外から見える町並みを眺めながら、ルシアナは拳をギュッと握りしめた。
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