髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革

18. オリビア、サロンを開く

 ――春。
 雪解けの季節がやってくると、ルミナリアの街に活気が戻ってきた。
 それは社交界でも同じことが言える。
 雪を気にしなくて良くなると、馬車での移動も容易になってあちこちでサロンやお茶会、夜会などが開かれるようになってくる。

「ルシアナ、本当に大丈夫なの?」
「大丈夫ですわ」

 ルシアナの母オリビアは内心、戦々恐々としていた。

 今日はオリビアが主催する、今年一番最初のサロンだ。そこへ娘のルシアナがどうしても参加したいと言って聞かない。
 冬の間にルシアナが開発していたヘアケア製品を、サロンで紹介したいと言うのだ。

 
 ルシアナがどれ程の苦労と努力を重ねていたかは、オリビアもよく知っている。
 ルシアナの部屋からは夜遅くまで明かりが灯り、昼間はあちこちを奔走していた。
 母としては10代前半の娘には、きっちりと淑女としての教育を受けて欲しいというのが本音だが、結局オリビアが口を挟むことは無かった。

 初め夫や義父から話を聞かされた時には、オリビアは卒倒しそうになった。
 こんな大事な時期に、娘に何をさせようとしているのだと。
 10代の後半にもなれば結婚を考える歳になる。それまでにあらゆる教養を身につけて、条件の良い男性を捕まえなければならないのに。
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