髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革
「そう言えばだな、オリビア。先程、第一王子殿下付きの従者から連絡があってな。一週間後に公爵邸を訪れる故、泊まらせて欲しいと言うことだ」
「なんですって? 一週間後?!」
「なんでまたそんなに急なのですか?」
母も姉も急な話に目を見開いている。
第一王子殿下……確かルシアナより一つか二つくらい年上の方で、王都ではまだ社交界デビューもしていないというのに大人気なのだとか聞いたことがある。
名前は確か、ケイリー・スタインフェルド。
「ケイリー王子は避暑の為に、毎年夏になるとアルベリア伯爵の所へ滞在するだろう? 通るはずだった橋が壊れて復旧には時間がかかるからと、少し遠回りをして向かうんだそうだ」
アルベリア伯爵の住む城は、ここから北西にある。王城から最短で向かうルートには我が家の方は通らないのだが、今回は事情が変わったらしい。
「そうですか……それでは仕方ありませんね。でもよりにもよってパーティーのすぐ後じゃないの。こうしてのんびり食事をしている暇なんてないわ! 早く準備を進めないと」
ナイフとフォークを素早く動かし食事を終わらせた母は、これまた素早い動きで食堂から出ていった。
「王子様ですって。顔見知りになっておいて損はないわ。ね、ルシアナ」
「話のタネくらいにはなりわすわね」
こらこら、と窘める父をよそにルシアナも席を立って部屋へと戻った。