髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革
――今からひと月ほど前。
王女のサインが施された手紙がルシアナに届き、家族一同で小首を傾げた。
いくらルシアナの高祖父が王弟だったからといって、王女との親交など一切ない。
「王女様からの手紙だなんて何かしら」
「デビュタントボールの招待状じゃないのかい?」
「あなた、デビュタントボールの招待状は王妃様から届くのよ。それに招待状ならとっくに来ているわ。ね、ルシアナ」
「ええ、既に参加のお返事は出しましたわ」
「とにかく開けて読んでみたら?」
姉に促され封を開けると中から出てきたのは招待状ではなく、お願いの手紙だった。
「なんて書いてあるの?」
良くない報せかと不安げな顔で聞いてくる母に、肩を竦めてみせる。
「王女様が婚約発表をなさるパーティーの前に、わたくしに髪の手入れをして欲しい。との事でしたわ」
「あら! ルシアナの話しがとうとう王室にまで届いたのね!」
「ルシアナ、どうするの?」
興奮気味の母に対して、姉は落ち着いた声で聞いてきた。
「王女様の頼みですもの。もちろん行きますわ。それにこの仕事を成功させれば、ルミナリアは最先端のオシャレを発信する街として知られ、更なる販路の拡大に繋がるでしょう?」
「はっはっはっ、ルシアナには頭が上がらないよ。全く」
――という訳でルシアナは、王女の婚約発表の前準備の為、侍女のモニカを連れて王宮へと向かっている。