髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革
「ケイリー様はよくもまあ毎年、こんな思いをして避暑になんて行きますわね。王都ってそんなに暑いのかしら」
「それもあるとは思いますが、各地を見て回るという意味合いもあるのでしょうね」
「ふぅん。でもここ何年かは、アルベリア伯爵様の所へは行っていないのでしょう?」
「そうらしいですね。やはりあの事件がありましたから、身の安全を考えるとおいそれと遠出する訳にもいかないのでしょう」
「そうよね……」
あの事件とは、4年近く前にケイリーがルミナリア公爵領へやって来た後の出来事。運悪くドラゴンに襲われたケイリーは大怪我を負ったものの、一命を取り留め回復したらしい。
幸い後遺症などもなく元気にしているとケイリーから返事の手紙を受け取り、その後も年に数回、季節の挨拶みたいなごく簡単なやり取りだけ続けている。
ルシアナが王宮へ行くことは知っているかもしれないが、一応出発前に手紙は出した。返信が来ても移動中のため受け取ることは出来ないけれど、王宮へ行けば会うことくらいはあるかもしれない。
「ベアトリス王女様ってケイリー様と双子なのでしょ? やっぱりケイリー様に似てお綺麗な方なのでしょうね」
ケイリーは中身はともかく、外見に関していえば欠点などまるでない、完璧な造形物のような少年だった。
あれから4年近く経つので、今はもう17か18歳だ。少年ではなく青年となり、数々の女性を虜にしている様がありありと浮かんでくる。