髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革

 ◇◆◇

「ベアトリス王女様にご挨拶申し上げます。わたくしルミナリア公爵の孫のルシアナ・スタインフェルドと申します」

 目の前に座る女性に向かって、ルシアナはスカートをつまんで軽く膝を折った。

 まっ……眩しい……っ!

 ベアトリス王女がキラキラと輝いて見えるのはきっと、窓から差す陽の光のせいだけじゃない。
 ケイリーの性別を変えたらこんな感じ。を具現化したような女性だ。
 
 青リンゴ色の瞳と、クイッと上がった口角。髪の色もごく淡い金髪とケイリーと同じだが、ケイリーは少し癖があったのに対して、ベアトリスのはストレートヘアで腰の辺りまで伸ばしている。

「待っていたわ! 遠路はるばる来てくれてありがとう。疲れたでしょう? こちらに座って話しましょう」

 王女付きの侍女が椅子を用意してくれたので、遠慮なく座らせてもらうことにした。ずっと馬車で座っての移動だったので、立ち続けるのは辛いなと思っていたところだった。

「手紙にも書いたけれど私、婚約するの。婚約発表の為にパーティーを開いても良かったのだけれど、デビュタントボールの時が時期的に丁度良くて。一番人が集まるしね。経費削減の為にも一緒にしちゃえばいいでしょ? もちろん主役はデビュタント達よ。婚約発表するだけだし、そもそも大部分の人は既に私が誰と婚約するかなんて知ってるもの。今更よね。ふふふ」

 くすくすと笑ってみせるベアトリスの頬には、小さなエクボが浮かんでいる。
 経費削減だなんて、王女はなかなかお茶目な方らしい。美人な上に親しみやすい人柄とは、隣国の王子が虜になるのも頷ける。
 もう一度笑ったベアトリスは、「ごめんなさい」と謝った。

「私ったら一人でお喋りしちゃったわ。せっかくのお茶が冷めちゃうわね。どうぞ召し上がって」
「ありがとうございます」

 勧められるがままにティーカップに口をつけると、ふわっとマスカットのような爽やかな香りが口の中に広がった。
 普段ルシアナが飲んでいる茶葉とは明らかに違う、極上品だと少し飲んだだけで分かった。
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