髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革
  
「よくお母様に怒られるの。あなたはお喋り過ぎるって」
「わたくしもよく母に怒られますわ」
「あら、あなたも?」
「はい。出しゃばり過ぎる女は男に煙たがれるから慎ましやかになりなさいと、よく小言を言われております」
「あははっ! けれどあなたのその性格に、ルミナリアは助けられたのではなくて?」

 ベアトリスはニコッと笑うと、ティーカップをソーサーに置いた。

「聞いているわ、あなたの活躍ぶりは。だからこそ私も、あなたをこうして呼んだのだけれど。髪の毛の扱いがとっても上手なんですってね? 婚約発表の時はさっきも言ったように目立つつもりはないの。でもおめかしはしたいじゃない?」
「そのお気持ちは分かりますわ。いつでも綺麗に見られたいと思うのは当然ですもの。御婚約者様に愛されているのならば尚更に」
 
 好きな人にもっと好かれたい時と一緒で、自分を好いてくれる人が隣にいるなら、その人のために自分を常に磨いておきたい。綺麗でありたい。そう思うのは至極当然の感情だ。

「それに自信こそ、最強の武器と心得ております」

 自信のある人は美しい。
 自然と目がいき、離せなくなる。
 社交界において権勢を握るためには、人を魅了する力が絶対的に必要。だから誰かを魅了したいと思うならまず自信を持つことだ。
 オシャレは自信を持つために、自分自身を後押ししてくれるツールとなってくれる。

 ルシアナがニッと口角を上げると、ベアトリスは納得したように頷いた。
  
「さすが。話が早くて助かるわ。子供が本当に領地改革をしているのか半信半疑だったけど……噂話も時には真実という事もあるのね。あなたも今年のデビュタントボールで社交界デビューするのでしょう? 忙しいのは重々承知しているけれど、しばらく私の侍女として働いてはくれないかしら」
「そのつもりでここまでやって参りました。どうぞよろしくお願い致します、ベアトリス王女殿下」

 こうしてルシアナは婚約発表を行う、ひと月半後のデビュタントボールの時まで、ベアトリス王女付きの侍女となった。
 
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