髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革

21. ルシアナ、新たな魔道具をお披露目する

 ルシアナが王宮へやって来てからひと月が経った。契約期間の半分以上を終えて、デビュタントボールまで残り2週間程となった。
 ベアトリスの洗髪はもちろんのこと、朝のヘアセットからメイクまで、美容に関する全ての仕事をルシアナは任されている。
 
 忙しすぎて目が回りそうだけれど、休んでなどいられない。
 ケアケア製品だって常に研究を重ねてアップデートし、消費者のニーズに応えていかなければならないし、ルミナリア公爵領理容師ギルド認定制度の事もある。

 父や母からはこちらの事は気にせずに、侍女の仕事に励むようにと言われてはいるけれど……。
 
 不安だ。
 
 如何せん、父も祖父も自他ともに認める『領地運営能力無し』なので、ほんの数ヶ月離れるだけでも心配でならない。

「ねえルシアナ。昨晩は髪を巻かないで眠ったけれど、本当に大丈夫なの?」

 朝、ベアトリスの髪をルシアナがブラシで梳いていると、怪訝な顔をしたベアトリスと鏡越しに目が合った。

「はい、ご心配なく。きちんと準備出来ておりますので」

 昨日、舞踏会で着るドレスが出来上がり納品されたという事で、今日はそれに合わせるアクセサリーやヘアメイクを決めていく。
 見せて貰ったドレスはオフショルダータイプで、肩周りがスッキリとしたデザイン。
 上質な生地が使われているものの随分とシンプルなデザインだなぁと思っていたら、婚約者から贈られたという、大小様々な大きさのダイヤモンドとパールとがふんだんにあしらわれた、ビブネックレスを合わせるのだそう。
 確かにこれだけ華やかで存在感のあるネックレスを付けるのなら、ドレスはスッキリとしたデザインの方が調度良い。
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