髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革
ベアトリスにヘアスタイルの要望を聞いたところ、何年か前からブームとなっているハーフアップにして欲しいとの事だった。
ネックレスに合わせてヘッドドレスもパールやダイヤモンドを基調としたものにしようか。ドレスの水色に合わせたリボンを付けるのも可愛いし……。
いくつか合いそうなヘッドドレスを用意してもらって、実際にドレスと合わせながら決めようと思っている。
ルシアナは手に持っていたブラシを鏡台に置くと、今度は箱から魔道具を取り出した。
「その金属の棒みたいなのは何かしら?」
「コテと言う、新しく開発した魔道具です。まだ試作の段階で販売はしていないのですが、使ってみたところ良い出来だったので、今回はこちらを使ってヘアセットをしていきます」
ドライヤーに続き、ルシアナは新たな魔道具の開発にも取り組んでいる。電動バリカンならぬ魔動バリカンの開発は難航しているが、今回使おうとしているコテの開発は、割とすんなりいった。
もともと調理用魔道具としてコンロが存在しているのでその応用といったところで、金属の棒に木製の柄を付けて、ある程度の温度調節が出来るようにしてもらってある。
先週ルミナリアから試作品が届いて何度も試しに使ってみたが、改善点はまだあるものの、ベアトリス王女に使っても問題はなさそうだった。
「開発中のものをベアトリス様に使うの?」
すぐ側で見ていた侍女頭か眉根を潜めて聞いてきた。まだ商品として成り立っていないものを不安がるのは当然だ。ルシアナはまず自分の髪の毛をコテに挟んで巻き付けてみせた。
「こうして金属部分に髪の毛を巻き付けて離すと……」
挟んでいた髪の毛をコテからするりと抜いて離すと、真っ直ぐだった髪の毛がウェーブを描いた。
「こうして癖がついて、巻き髪になります」
「「「「「おぉーー」」」」」
様子を見ていた侍女達から歓声が上がった。ベアトリスに至っては小さく拍手までしている。