髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革

「一体どうなっているの?」
「洋服のシワを伸ばすアイロンと同じ原理です。金属部分が熱くなっているので、熱で癖をつけているという訳です。ちなみにコテと一緒にストレートアイロンという魔道具も開発していて、こちらは逆に、髪の毛を真っ直ぐにしたい時に使う魔道具です。こんな風に……」

 先程コテで巻いた髪の毛に、今度はもう一つの魔道具『ストレートアイロン』で挟んでスーッと下へと動かすと、真っ直ぐなストレートヘアに戻った。

「「「「「おおぉぉーー!!」」」」」 
「凄いわ! 髪の毛をここまで自在に操れるなんて」
「ルシアナ、そのストレートアイロンというのはいつから売り出すの?」
「私はコテの方が欲しいわ! 予約させて!」
「まあまあ、落ち着いて下さい。ご予約なら後で承りますわ。まずはベアトリス様のヘアセットを完了させないと」

 手応えは上々ね。
 ドライヤーに続き、こっちの魔道具も飛ぶように売れそうだわ。

 ルシアナは内心でニヤつきながら、ベアトリスの髪の毛を巻いていく。

「毛先は内巻きに、中間部分は外巻きと内巻きを交互に繰り返して巻いていきます。こうやってミックス巻きにすると動きが出て、すごく華やかな印象になりますわ」
「ルシアナの言う通りだわ。それに、いつもの方法よりもずっと綺麗な仕上がりだし、何より楽だわ」

 ベアトリスの言ういつもの方法とは、夜寝る前に湿った髪を木の棒に巻き付けて、癖をつけるというもの。
 湿った髪を自然乾燥させるので、どうしても仕上がりがボワボワになってしまう。
 それに軽い木材を使っているとは言え何本も巻き付けると重たいし、棒が硬いので眠る際には邪魔でならない。

「コテを使う方法なら素早く仕上げられますので、夜伽のある日の翌日に巻き髪をしたくなっても心配いりませんわ」

 髪の毛に棒をいっぱいくっ付けたままでは、ムードも何もあったものでは無いだろう。
 ルシアナはまだそういった経験は皆無だが、少なくとも自分なら可愛い状態で抱かれたい。
 
「あらルシアナったら、よく分かってるわね。あなた本当に侍女になるのは私が初めて? どこかの夫人付きだったのではなくて?」
「売るための謳い文句を沢山用意する為に、あれこれ想像を巡らせているだけですわ」

 ルシアナの回答に、ベアトリスや侍女仲間達が笑った。
 
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