髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革

「まったく。仕事はしっかりとこなせるのに、自分のこととなるとてんでダメみたいね。いいわ。私が当日までに探してあげる」
「ええ? そんな。ベアトリス様に探してもらうなんて」
「こういうのって女主人の仕事でもあるのよ。いい予行練習になるわ」

 クスクスと笑いながら「任せなさい」と胸に手を当てている。
 流石は双子。笑った時に出来るエクボが、本当にケイリーにそっくりだ。

「ベアトリス様の双子の御令弟様も、今回の舞踏会に参加するのですよね? 四年近くお会いしていないので、随分と久しぶりですわ」

 王宮で働いていれば、ケイリーと会うことく
らいあるだろうと思っていたが、まだ一度も見かけた事すらない。
 王族はみな東館に住んでいて、第二王子や第三王子とは会ったのに……。
 社交的な人だったし、あちこち飛び回っていて見かけないのかしら。4年前に会った気の合わない女になど、挨拶する気にもなれないって可能性も無きにしも非ずね。と考えを巡らせていると、ベアトリスにしては珍しく、表情を曇らせた。

「えぇと、どうかしら。私の婚約発表もあるし、出て欲しいとは思っているのだけど……」
「……?」

 ベアトリスだけでなく、侍女達の表情も何だか微妙だ。
 頭の中にハテナが沢山浮かんでいるルシアナに、侍女頭がパンっと両手を叩いた。
 
「さあルシアナ、さっきから手が止まっているわよ。早くヘアセットを終えてしまいなさい。ベアトリス様がお疲れになるでしょう」
「そうでしたわ! 失礼致しました。すぐに終わらせますので」

 カールを施したベアトリスの髪の毛に、ルシアナオリジナルのヘアオイルを揉みこみながら、気持ちを切り替えようと被りを震った。

 ケイリーのことなんてどうでもいいじゃない。どうせ会ったって、嫌味の言い合いになるだけなんだから。
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