髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革

 デビュタントボールでは、その年のデビュタント達が最初の一曲目を踊るしきたりとなっているので、パートナーは必須。
 まさかと思って聞いてみたら、そのまさかで、パートナーはいないと言うではないか。
 本人も初めての舞踏会で忙しいのに、突然呼び付けてしまったこちらも悪い。ならばとルシアナに、パートナー探しをしておくと提案した。

「パートナー……いないんだ」
「誰がいいかしら? アミレント子爵の次男は王宮の財務官として働いていたわよね。それともベルヒム伯爵の何番目だったかは忘れたけど、騎士団にいたわね。あの方もルシアナに良さそうだわ。それか――」

 伊達に王女をやっていない。
 あちこちのパーティーに出席しては人脈を築き、どこの誰がどんな事をして、どの家と仲がいいのか等、ありとあらゆる情報を常日頃から収集している。

「あっ! スターン侯爵の長男がいいわ!! 昨年遊学から帰ってきたばかりで、婚約もしてなかったはずだもの。 早速、早馬を出して――」
「ダメだっ!!!」
「え……?」

 ベアトリスがペラペラと1人で喋り続けていたところに、突然、ケイリーが大きな声を出した。
 ベアトリスよりも、大声を出したケイリー自身の方が驚いているようで、目を白黒させて慌てている。

「い、いや……その……舞踏会まであと2週間しかないんだろ? 有力な令息はもう相手くらいいるんじゃないかと……」
「そんな事を言ったって仕方ないでしょ。とにかくあちこちに聞いてみないと。ルシアナは公爵家の令嬢なのよ。下手な人には相手させられないわ」
「そ、そうだけどさ……」
「じゃあなに? ケイリーがエスコートしてくれるって言うの?」

 ベアトリスにだって分かっていることを言われて、つい意地悪をしてしまった。
 しまった、とケイリーの見えずらい顔を見ると、予想外にも顔を真っ赤にしていた。
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