眠れぬ夜は、優しすぎる刑事の腕の中で。
静まり返った部屋に、テレビの音だけが流れていた。
報道番組。
映し出されたのは、心を押し殺すような小さな子どもの顔。
「虐待の実態」というテロップ。
──その瞬間、空気が変わる。
花音は、思わず画面に目を奪われてしまった。
でも次の瞬間、リモコンを取った匠が、迷いなくそのチャンネルを消す。
テレビの光が消え、部屋は静けさに包まれた。
匠の横顔には陰りがあった。
彼は静かに、花音の手に手を重ねた。
その温かさに、花音もそっと握り返す。
匠はそのまま、花音をソファに座らせた。
そして、自分も隣に腰を下ろすと、低い声で言葉を紡いだ。
「……あまり、自分を犠牲にしないで」
花音は、そっと目を伏せた。
「川野家の保護措置のとき……一瞬、本気で、花音も救急車必要かと思った。
声かけても、目が焦点合ってなくて。ぐったりしてて、息も浅くて……。
あのとき、……心配で、おかしくなるかと思った」
花音の目に、じわっと涙が浮かんだ。
「……でも、それでも止まれなかった。助けなきゃ、って」
匠は、花音の手を強く握った。
「……人を助けて、自分が潰れるのは、何にも褒められることじゃない。
だから、せめて僕の前では、強くなくていい。正しくなくていい。
そのままの、花音でいれば良いんだよ」
花音は、その言葉を静かに受け止めた。
泣かないって決めてたのに、どうしても涙がこぼれてしまう。
だけど、不思議とそれは「しんどさ」からじゃなかった。
「……ありがとうございます、たくみさん」
泣いているのに、笑ってしまう。
笑っているのに、また涙がこぼれる。
そのまま、ふたりは手を繋いだまま、言葉を交わさずにただそばにいた。
ご飯の炊ける、かすかな蒸気音が、静かな時間に溶けていった。
報道番組。
映し出されたのは、心を押し殺すような小さな子どもの顔。
「虐待の実態」というテロップ。
──その瞬間、空気が変わる。
花音は、思わず画面に目を奪われてしまった。
でも次の瞬間、リモコンを取った匠が、迷いなくそのチャンネルを消す。
テレビの光が消え、部屋は静けさに包まれた。
匠の横顔には陰りがあった。
彼は静かに、花音の手に手を重ねた。
その温かさに、花音もそっと握り返す。
匠はそのまま、花音をソファに座らせた。
そして、自分も隣に腰を下ろすと、低い声で言葉を紡いだ。
「……あまり、自分を犠牲にしないで」
花音は、そっと目を伏せた。
「川野家の保護措置のとき……一瞬、本気で、花音も救急車必要かと思った。
声かけても、目が焦点合ってなくて。ぐったりしてて、息も浅くて……。
あのとき、……心配で、おかしくなるかと思った」
花音の目に、じわっと涙が浮かんだ。
「……でも、それでも止まれなかった。助けなきゃ、って」
匠は、花音の手を強く握った。
「……人を助けて、自分が潰れるのは、何にも褒められることじゃない。
だから、せめて僕の前では、強くなくていい。正しくなくていい。
そのままの、花音でいれば良いんだよ」
花音は、その言葉を静かに受け止めた。
泣かないって決めてたのに、どうしても涙がこぼれてしまう。
だけど、不思議とそれは「しんどさ」からじゃなかった。
「……ありがとうございます、たくみさん」
泣いているのに、笑ってしまう。
笑っているのに、また涙がこぼれる。
そのまま、ふたりは手を繋いだまま、言葉を交わさずにただそばにいた。
ご飯の炊ける、かすかな蒸気音が、静かな時間に溶けていった。