眠れぬ夜は、優しすぎる刑事の腕の中で。
夜の和食屋「季菜屋(きさいや)」は、杉並の住宅街にひっそりと佇む隠れ家のような店だった。
暖簾をくぐると、木の香りがほのかに漂う。
カウンターと小さな個室だけの落ち着いた空間。
控えめな照明に照らされた器と料理は、どこか懐かしさと品の良さを感じさせる。
二人は、掘りごたつ式の小上がりに並んで座っていた。
「ここ、よく来るんですか?」と花音が問いかけると、
「前に一度、署の人と。静かで、好きな雰囲気だったから」と早瀬が返す。
湯葉のあんかけ、炊き合わせ、旬の焼き魚。
季節の野菜をふんだんに使った小鉢が次々と運ばれてくる。料理を口に運ぶたび、どこか肩の力が抜けていくような、そんな感覚。
ふとした瞬間、掘りごたつの下で、花音の足先が早瀬の足にそっと触れた。
「……っ、ごめんなさい」
慌てて引っ込めた彼女に、早瀬は微笑んで首を横に振る。
「いいよ。」
花音は湯呑みを両手で包みながら、頬をわずかに赤らめる。
「無理、してない?」と、早瀬が急に花音の横顔を覗き込むように言った。
「え?」と驚いて、花音は少し間をおいてから笑った。
「…うん。ちょっとだけ緊張してる。新しいケースの受け持ちになったから。まだ家庭訪問したばかりだけど。」
早瀬は黙って頷く。
「でも、今回は赤ちゃんじゃないから。だいぶ、気持ちは楽。」
「そっか」と早瀬は短く言ってから、「花音って、いつも子どものことばっかりで、自分のこと後回しにしてるから」
花音は目を細めて、ふわりと笑う。
「たくみさんが、見てくれてるから。大丈夫。」
「……甘いこと言うね」
「たまには言いますよ」
そのやりとりに、店主が静かに笑いながら料理を運んできた。
会話も、料理も、時間も、すべてが穏やかに流れていた。
明日を忘れるような、そんな夜だった。
暖簾をくぐると、木の香りがほのかに漂う。
カウンターと小さな個室だけの落ち着いた空間。
控えめな照明に照らされた器と料理は、どこか懐かしさと品の良さを感じさせる。
二人は、掘りごたつ式の小上がりに並んで座っていた。
「ここ、よく来るんですか?」と花音が問いかけると、
「前に一度、署の人と。静かで、好きな雰囲気だったから」と早瀬が返す。
湯葉のあんかけ、炊き合わせ、旬の焼き魚。
季節の野菜をふんだんに使った小鉢が次々と運ばれてくる。料理を口に運ぶたび、どこか肩の力が抜けていくような、そんな感覚。
ふとした瞬間、掘りごたつの下で、花音の足先が早瀬の足にそっと触れた。
「……っ、ごめんなさい」
慌てて引っ込めた彼女に、早瀬は微笑んで首を横に振る。
「いいよ。」
花音は湯呑みを両手で包みながら、頬をわずかに赤らめる。
「無理、してない?」と、早瀬が急に花音の横顔を覗き込むように言った。
「え?」と驚いて、花音は少し間をおいてから笑った。
「…うん。ちょっとだけ緊張してる。新しいケースの受け持ちになったから。まだ家庭訪問したばかりだけど。」
早瀬は黙って頷く。
「でも、今回は赤ちゃんじゃないから。だいぶ、気持ちは楽。」
「そっか」と早瀬は短く言ってから、「花音って、いつも子どものことばっかりで、自分のこと後回しにしてるから」
花音は目を細めて、ふわりと笑う。
「たくみさんが、見てくれてるから。大丈夫。」
「……甘いこと言うね」
「たまには言いますよ」
そのやりとりに、店主が静かに笑いながら料理を運んできた。
会話も、料理も、時間も、すべてが穏やかに流れていた。
明日を忘れるような、そんな夜だった。