眠れぬ夜は、優しすぎる刑事の腕の中で。
まぶたの奥がじわじわと明るくなってきて、花音はゆっくりと目を開けた。
時計を見る。思ったより時間が経っている。
「……えっ、寝坊……」
寝る前にあれだけ話しておきながら、完全に爆睡してしまったらしい。
枕の横に目をやると、匠はいない。でも――代わりに、ふわりと漂ってくる甘い香り。
寝ぼけた頭がその香りに引き寄せられるように、寝室をそっと抜け出す。
足音を忍ばせてキッチンを覗くと、エプロン姿の匠がフライパンを真剣に見つめていた。
「……じゅっ、今っ、返すぞ……!」
ひとりで実況中継しながら、ぷっくりと膨らんだホットケーキをくるんとひっくり返す。
ちょうどきれいな焼き色がついて、彼はひとり小さくガッツポーズ。
「……なにやってんの。」
その声に驚いたのか、匠がピクリと肩を揺らした。
「わ、起きた? いや、うん、起きてこなかったからさ、朝ごはんでもと思って。」
「ホットケーキ……」
「うん。昨日、冷蔵庫に“ナムル用”って書いてあった隣に、ホットケーキミックスあったから。」
「その注意書き、無視されてる……」
花音が呆れたように笑うと、匠は照れくさそうに肩をすくめた。
テーブルの上には、すでに焼き上がったものが数枚、湯気を立てて積まれていた。
その横にはバターとシロップ、そして花音の好物のいちごジャムまで。
「もしかして、ちゃんと朝ごはん食べたの、久しぶり?」
匠がそう言うと、花音はゆっくりとうなずいた。
「……うん。休みの日も、たいていバナナかヨーグルトで済ませちゃうから。」
「そっか。じゃあ今日は、ちゃんと“朝”らしい朝にしよう。」
ふたり並んで椅子に座り、あたたかいホットケーキにナイフを入れる。
表面はカリッと香ばしくて、中はふわふわ。
ひとくち頬張ると、バターの塩気と甘いシロップが口の中で広がって――自然と笑みがこぼれる。
「……なんか、幸せ。」
「うん。俺も。」
そう言い合って、また静かにホットケーキを口に運んだ。
日常の延長にある、特別な朝。
こんな朝が、続いていけばいいのに――そう思った。
時計を見る。思ったより時間が経っている。
「……えっ、寝坊……」
寝る前にあれだけ話しておきながら、完全に爆睡してしまったらしい。
枕の横に目をやると、匠はいない。でも――代わりに、ふわりと漂ってくる甘い香り。
寝ぼけた頭がその香りに引き寄せられるように、寝室をそっと抜け出す。
足音を忍ばせてキッチンを覗くと、エプロン姿の匠がフライパンを真剣に見つめていた。
「……じゅっ、今っ、返すぞ……!」
ひとりで実況中継しながら、ぷっくりと膨らんだホットケーキをくるんとひっくり返す。
ちょうどきれいな焼き色がついて、彼はひとり小さくガッツポーズ。
「……なにやってんの。」
その声に驚いたのか、匠がピクリと肩を揺らした。
「わ、起きた? いや、うん、起きてこなかったからさ、朝ごはんでもと思って。」
「ホットケーキ……」
「うん。昨日、冷蔵庫に“ナムル用”って書いてあった隣に、ホットケーキミックスあったから。」
「その注意書き、無視されてる……」
花音が呆れたように笑うと、匠は照れくさそうに肩をすくめた。
テーブルの上には、すでに焼き上がったものが数枚、湯気を立てて積まれていた。
その横にはバターとシロップ、そして花音の好物のいちごジャムまで。
「もしかして、ちゃんと朝ごはん食べたの、久しぶり?」
匠がそう言うと、花音はゆっくりとうなずいた。
「……うん。休みの日も、たいていバナナかヨーグルトで済ませちゃうから。」
「そっか。じゃあ今日は、ちゃんと“朝”らしい朝にしよう。」
ふたり並んで椅子に座り、あたたかいホットケーキにナイフを入れる。
表面はカリッと香ばしくて、中はふわふわ。
ひとくち頬張ると、バターの塩気と甘いシロップが口の中で広がって――自然と笑みがこぼれる。
「……なんか、幸せ。」
「うん。俺も。」
そう言い合って、また静かにホットケーキを口に運んだ。
日常の延長にある、特別な朝。
こんな朝が、続いていけばいいのに――そう思った。