眠れぬ夜は、優しすぎる刑事の腕の中で。
朝の児童相談所。
窓際の観葉植物がまだ湿った朝日を浴びているなか、花音はすでにデスクに着いていた。
赤尾香澄と悠真のケースファイルを開き、メモを走らせながら、今日の家庭訪問に向けての確認事項を整理している。
「……前回の訪問から2週間。悠真くんの学校欠席は継続。香澄さんは医療との接点が切れたまま。次の一手をどう打つか……」
独りごちるように呟いたその時、チームリーダーの朝岡が声をかけてきた。
「佐原さん、赤尾さんの件、朝のミーティングで共有しておきたい。今日の訪問、前担当の山口とも連絡取ってある?」
「はい。引き継ぎメモ以上に、山口さんからも個別に聞いています。親子の心理的距離が近すぎる点と、香澄さんの不安定さについて。」
「今回は特に、“予兆”の拾い方が鍵だね。訪問後、次の一手をどうするか、一緒に詰めよう。」
花音はうなずきながらファイルを閉じ、資料を片手に小さな会議室へ向かう。
チームの3名が集まり、赤尾家の現状と、家庭訪問に向けた注意点が次々と口にされていく。
「香澄さん、前回は応答も弱かったよね」
「悠真くんの表情、すごく閉じていたのが気になる。そろそろ外部支援の併用も……」
「学校との連携強化も必要かも。市川先生、どうだった?」
花音が淡々と、しかし丁寧に答えていく。担任である市川からの最新の情報も共有しながら、子どもがSOSを出している“かもしれない”前提で話を進める。
最後に朝岡が締める。
「佐原さん、今回も現場では“緊張と共感”の両方を忘れずに。あの家庭、境界が崩れるリスクがある。優しさだけでは解決できない。けど、冷たさだけでも動かない。」
「わかっています。」
花音の声は凛としていた。
どんな案件でも、家庭の玄関の前に立つ瞬間は緊張する。
だが今回はとくに、香澄の“限界”がすぐそこにあるような気がしてならなかった。
窓際の観葉植物がまだ湿った朝日を浴びているなか、花音はすでにデスクに着いていた。
赤尾香澄と悠真のケースファイルを開き、メモを走らせながら、今日の家庭訪問に向けての確認事項を整理している。
「……前回の訪問から2週間。悠真くんの学校欠席は継続。香澄さんは医療との接点が切れたまま。次の一手をどう打つか……」
独りごちるように呟いたその時、チームリーダーの朝岡が声をかけてきた。
「佐原さん、赤尾さんの件、朝のミーティングで共有しておきたい。今日の訪問、前担当の山口とも連絡取ってある?」
「はい。引き継ぎメモ以上に、山口さんからも個別に聞いています。親子の心理的距離が近すぎる点と、香澄さんの不安定さについて。」
「今回は特に、“予兆”の拾い方が鍵だね。訪問後、次の一手をどうするか、一緒に詰めよう。」
花音はうなずきながらファイルを閉じ、資料を片手に小さな会議室へ向かう。
チームの3名が集まり、赤尾家の現状と、家庭訪問に向けた注意点が次々と口にされていく。
「香澄さん、前回は応答も弱かったよね」
「悠真くんの表情、すごく閉じていたのが気になる。そろそろ外部支援の併用も……」
「学校との連携強化も必要かも。市川先生、どうだった?」
花音が淡々と、しかし丁寧に答えていく。担任である市川からの最新の情報も共有しながら、子どもがSOSを出している“かもしれない”前提で話を進める。
最後に朝岡が締める。
「佐原さん、今回も現場では“緊張と共感”の両方を忘れずに。あの家庭、境界が崩れるリスクがある。優しさだけでは解決できない。けど、冷たさだけでも動かない。」
「わかっています。」
花音の声は凛としていた。
どんな案件でも、家庭の玄関の前に立つ瞬間は緊張する。
だが今回はとくに、香澄の“限界”がすぐそこにあるような気がしてならなかった。