眠れぬ夜は、優しすぎる刑事の腕の中で。
玄関のチャイムが静かに鳴る。
花音のノックに続き、扉がゆっくりと開かれた。

「赤尾さん……今日は、ありがとうございます。」

母・香澄は疲れ切った表情で顔を見せた。
悠真くんは学校に行っていて不在だった。

中に招かれ、花音はゆっくりと部屋の様子を見渡す。
荒れた印象はあるが、ゴミは片付けられていた。

ふと目をやると、机の上に市販の鎮咳薬の箱が置いてある。
咳をしている様子はないが、その存在が気になった。

花音はできるだけ表情を変えずに、静かな口調で尋ねる。

「香澄さん、眠れていますか?」

香澄は小さく首を振った。

「眠れないんです。悠真が夜泣きするんです。もう大きいのに……。」

声には疲労と困惑が滲んでいた。

花音はじっと香澄の顔を見つめ、静かにうなずいた。
心の中で、この先の難しさを再確認しつつも、決して急がず、少しずつ関係を築こうと気持ちを固めるのだった。
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