眠れぬ夜は、優しすぎる刑事の腕の中で。
寝室に入ると、匠は花音をそっとベッドに降ろし、掛け布団をふわりと広げる。

花音はそのまま、ゆるやかな動きで布団にくるまりながら、にっこりと笑った。

「ありがと、王子様」

「姫はずいぶん甘えんぼだな」

そう言いながら匠も横になり、自然と花音を胸元に抱き寄せる。

ぴたりと触れ合う距離に、花音の目がとろんと細くなっていく。

「ねぇ……もっとキスして、いっぱい。そしたらきっと、ぐっすり眠れる」

囁くような声でそう言って、花音はそっと唇を重ねてきた。

それに応えるように、匠も彼女の頬やまぶた、額へと優しくキスを重ねていく。

「……これで足りる?」

「うん……たくみのキス、全部あったかい」

花音の言葉に、匠の胸が静かに熱を持つ。

今日もいろんな顔を見せてくれた花音が、今こうして自分の腕の中で甘えていることが、ただただ愛おしかった。

「……じゃあ、おやすみ、花音」

「おやすみ……たくみ……」

すぐに花音は穏やかな寝息を立てはじめる。

匠はその髪をそっと撫でながら、彼女の温もりを腕に感じていた。

――誰よりも頑張って、誰よりも優しい。
そんな彼女を、今夜も守れる場所にいられることが、何よりの救いだった。

夜の闇は深いけれど、ふたりの間にはただ、静かな安らぎが満ちていた。
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