眠れぬ夜は、優しすぎる刑事の腕の中で。
9月下旬、次の家庭訪問に向けた1週間。
花音は朝から資料を抱え、職場と外部を奔走していた。
香澄の「いなくなってもいい」という発言は、児相として明確にリスクが高い。
一歩間違えば、命に関わる。
会議後の個別対応として、三宅が花音の席に声をかけた。
「花音さん、今回の件、僕から医療との連携ラインもう一度引き直しておくよ。
中島さんとはこっちからも連絡する。心理士として香澄さんが話せる相手を、明確にしておくべきだ」
「ありがとうございます……本当に助かります」
「あと、福祉課にも動いてもらえるよう調整しよう。シングル世帯の支援プラン、可能性探ってみる。
花音さん、全部背負おうとしないで。チームでやるんだから」
その言葉に、花音は小さくうなずいた。
学校との連携も欠かせない。
藤原先生には、悠真の欠席状況に加えて、保健室との情報共有も依頼した。
「ご無理のない範囲で。難しい時は無理に関わらなくても構いません」
そう念押しすることも忘れずに。
一通りの作業を終えて日が落ちた頃、花音のスマホが震えた。
画面には「早瀬匠」。
「……もしもし?」
「おつかれ、今大丈夫?声、疲れてるけど」
「うん、大丈夫。ちょっと集中してただけ」
「……あのさ、無理してない?最近ずっと夜も遅いし」
花音は苦笑しながらも、まっすぐな声で答えた。
「ありがとう。でもね、今が正念場なの。
ここで踏ん張らないと、きっと後悔する。
だから……やるよ、ちゃんと」
「……わかった。じゃあ、ちゃんと踏ん張れるように、俺が見張ってるから。
無理しすぎたら、絶対言えよ?」
「うん。たくみがいると思うだけで、もうだいぶ回復してる」
「……そっか。じゃ、そろそろ切るよ。ほんとはそっち行きたいけど、夜勤入る前でさ」
「がんばって。私も、がんばる」
通話を切った花音は、ふっと息を吐いた。
デスクに戻ると、三宅から届いていた医療機関連携メモと福祉制度の提案資料が目に入る。
(……ひとりじゃない。ちゃんと、繋がってる)
そう思いながら、花音はもう一度、次の家庭訪問に向けて手帳を開いた。
できることは、全部やる。
——今度こそ、あの扉を閉ざさせないために。
花音は朝から資料を抱え、職場と外部を奔走していた。
香澄の「いなくなってもいい」という発言は、児相として明確にリスクが高い。
一歩間違えば、命に関わる。
会議後の個別対応として、三宅が花音の席に声をかけた。
「花音さん、今回の件、僕から医療との連携ラインもう一度引き直しておくよ。
中島さんとはこっちからも連絡する。心理士として香澄さんが話せる相手を、明確にしておくべきだ」
「ありがとうございます……本当に助かります」
「あと、福祉課にも動いてもらえるよう調整しよう。シングル世帯の支援プラン、可能性探ってみる。
花音さん、全部背負おうとしないで。チームでやるんだから」
その言葉に、花音は小さくうなずいた。
学校との連携も欠かせない。
藤原先生には、悠真の欠席状況に加えて、保健室との情報共有も依頼した。
「ご無理のない範囲で。難しい時は無理に関わらなくても構いません」
そう念押しすることも忘れずに。
一通りの作業を終えて日が落ちた頃、花音のスマホが震えた。
画面には「早瀬匠」。
「……もしもし?」
「おつかれ、今大丈夫?声、疲れてるけど」
「うん、大丈夫。ちょっと集中してただけ」
「……あのさ、無理してない?最近ずっと夜も遅いし」
花音は苦笑しながらも、まっすぐな声で答えた。
「ありがとう。でもね、今が正念場なの。
ここで踏ん張らないと、きっと後悔する。
だから……やるよ、ちゃんと」
「……わかった。じゃあ、ちゃんと踏ん張れるように、俺が見張ってるから。
無理しすぎたら、絶対言えよ?」
「うん。たくみがいると思うだけで、もうだいぶ回復してる」
「……そっか。じゃ、そろそろ切るよ。ほんとはそっち行きたいけど、夜勤入る前でさ」
「がんばって。私も、がんばる」
通話を切った花音は、ふっと息を吐いた。
デスクに戻ると、三宅から届いていた医療機関連携メモと福祉制度の提案資料が目に入る。
(……ひとりじゃない。ちゃんと、繋がってる)
そう思いながら、花音はもう一度、次の家庭訪問に向けて手帳を開いた。
できることは、全部やる。
——今度こそ、あの扉を閉ざさせないために。