眠れぬ夜は、優しすぎる刑事の腕の中で。
遠くから響くサイレンの音が徐々に大きくなる。
花音は震える足に気合いを込め、なんとか立ち上がりながら玄関を開け放つ。

「赤尾さんは奥です!」
声を張り上げ、救急隊員たちを迎え入れた。

隊員たちは素早く動き出す。
一人が倒れている香澄のそばに駆け寄り、脈を確認する。

「脈、あります。弱いけどしっかりと……呼吸も確認しました」
救急隊員の声に、花音はその言葉だけで肩の力が少し抜けた。

しかし安堵の余裕はほんのわずか。
担架で香澄を慎重に搬送しながら、玄関の外にパトカーのライトが連なって次々と到着する。

花音は靴を履くことも忘れ、玄関から外に出ると、外壁に身体をずるずると降ろし座り込んだ。
心臓の鼓動が激しく、呼吸が浅い。
疲労と緊張が全身を覆う。

救急隊の一人が花音の様子に気づき、低い声で声をかける。
「佐原さん、体調に異変があるなら、すぐに病院へ行ってください」

だがそのまま、意識のない香澄の搬送を優先し、隊員たちは慌ただしく動き続ける。

花音は、辺りの騒音をぼんやりと聞きながらも、ただひたすらに祈った。
「まだ、間に合う……絶対に……」
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