眠れぬ夜は、優しすぎる刑事の腕の中で。
処置室前で、どれほどの時間が経ったのか。
時計の針は、ようやく正午を少し過ぎた頃を指していた。
早瀬が何度目かの深い息を吐いたとき、処置室のドアが開き、白衣の医師が姿を現した。
「……早瀬さんですね。杉並署の刑事さんと伺っています」
立ち上がった早瀬に、医師は軽く会釈をして本題に入った。
「佐原花音さんですが、一酸化炭素中毒による意識障害で運ばれました。幸い発見と搬送が早く、高濃度酸素による処置が奏功しています。現在は安定しており、意識も回復傾向にあります」
「……本当に、無事なんですか?」
思わず食い気味に聞くと、医師はうなずきながら続けた。
「一酸化炭素中毒では、体内のヘモグロビンが酸素の代わりに一酸化炭素と結びつくため、見かけ上は血色が良くても内部では深刻な酸欠が起こります。到着時、彼女のSpO₂(酸素飽和度)は80%台前半と低下しており、頭痛、吐き気、朦朧状態がありました」
「……後遺症は……?」
「可能性はゼロではありませんが、今のところ神経学的異常は認められていません。今後24時間程度は経過観察が必要ですが、今は安心していい状態です」
言葉の端々には冷静な医療的判断が滲んでいたが、早瀬の胸にはその「安心していい」という言葉が真っ直ぐに届いた。
「ご本人、目を覚ましてから何度か名前を呼んでいました。おそらく、あなたのことかと」
早瀬は小さくうなずいた。
「面会、可能ですか?」
「はい、5分程度であれば。処置室奥の観察ベッドへご案内します」
時計の針は、ようやく正午を少し過ぎた頃を指していた。
早瀬が何度目かの深い息を吐いたとき、処置室のドアが開き、白衣の医師が姿を現した。
「……早瀬さんですね。杉並署の刑事さんと伺っています」
立ち上がった早瀬に、医師は軽く会釈をして本題に入った。
「佐原花音さんですが、一酸化炭素中毒による意識障害で運ばれました。幸い発見と搬送が早く、高濃度酸素による処置が奏功しています。現在は安定しており、意識も回復傾向にあります」
「……本当に、無事なんですか?」
思わず食い気味に聞くと、医師はうなずきながら続けた。
「一酸化炭素中毒では、体内のヘモグロビンが酸素の代わりに一酸化炭素と結びつくため、見かけ上は血色が良くても内部では深刻な酸欠が起こります。到着時、彼女のSpO₂(酸素飽和度)は80%台前半と低下しており、頭痛、吐き気、朦朧状態がありました」
「……後遺症は……?」
「可能性はゼロではありませんが、今のところ神経学的異常は認められていません。今後24時間程度は経過観察が必要ですが、今は安心していい状態です」
言葉の端々には冷静な医療的判断が滲んでいたが、早瀬の胸にはその「安心していい」という言葉が真っ直ぐに届いた。
「ご本人、目を覚ましてから何度か名前を呼んでいました。おそらく、あなたのことかと」
早瀬は小さくうなずいた。
「面会、可能ですか?」
「はい、5分程度であれば。処置室奥の観察ベッドへご案内します」