眠れぬ夜は、優しすぎる刑事の腕の中で。
案内された安静室の扉をそっと開けると、そこにはベッドに横たわる花音の姿があった。

酸素マスクをつけ、額には薄く汗。
点滴が腕に繋がれ、ベッド脇のモニターが静かに鼓動を刻んでいる。

白く整ったシーツに包まれた彼女は、どこか痛々しく、普段の気丈な姿からは遠かった。

「……花音」

花音が、ゆっくりとこちらに視線を向けた。

「……たくみ……?」

その声はかすれていて、けれど確かに届いた。

「花音……よかった……無事で……」

言葉にならない思いが込み上げる。
早瀬はベッド脇に腰を落とし、彼女の手を握った。

「もう……心配かけすぎだ」

「……香澄さんは……悠真くんは……」

か細い声で続くその問いに、早瀬は頷いた。

「香澄さんは助かった。悠真くんも見つかったよ。無事だった。公園の遊具に隠れてた。もう保護されてる」

その言葉に、花音の目元が潤んだ。

「……よかった……」

目尻から一筋、涙がこぼれた。
その安心に、早瀬の胸にもまたこみ上げるものがあった。

「……他のことは、今は考えなくていい。花音が無事だったことだけで……俺は……」

声が震えた。
堪えようとしたけれど、目の奥が熱くなる。

「ありがとう、生きててくれて……」

握った手に、ほんのわずかに力が返ってきた。
それだけで、世界が少し戻ってくる気がした。
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