眠れぬ夜は、優しすぎる刑事の腕の中で。
由香里の手作りクッキーと淹れたての紅茶が、リビングに甘い香りを漂わせていた。
クッキーは素朴な形ながらも、口に入れればほろっと崩れて、優しいバターの風味が広がる。
由香里と博志の夫婦は、テレビのニュースにツッコミを入れたり、買い物の話をしたりしながら笑っていたが、花音はどこか浮かない様子で、口数が少ない。
匠はそんな様子を見て、ソファに座っていた花音の隣に腰を下ろすと、軽く笑いながら、彼女の頭を優しく撫でた。
「……なにその顔。さっきの玄関のこと、気にしてるの?」
花音は少し身を引きながら、目を丸くして言った。
「ちょっと……ご両親見てたでしょ……」
「見てたら、何?」
「やめてよ……」
そう言いながらも、花音は匠の手を取り、自分の頭から外そうとした。
しかしその仕草はどこか甘えにも似ていて、匠はますますニヤリとする。
その様子を見ていた由香里が、すかさず笑いながら声をかけてきた。
「もう、別にいいのよ? 私たちのこと気にしないで、ラブラブしてもらっても。ねえ、お父さん?」
「そうそう、若いっていいね~」
「……ちょっと、スーパーのタイムサービス行きたいの思い出した。花音ちゃん、ちょっと留守にするけどゆっくりしてて。お父さん、米買うから荷物持ちね。行くわよ」
「ええ~!? 草取り終わったばっかなのに……」
文句を言いながらも、博志はジャンパーに袖を通し、ボディバッグを肩にかけて玄関へと向かう。
由香里も軽やかな足取りでそれに続いた。
「いってきまーす」と玄関が閉まり、家の中が急に静かになった。
その瞬間、匠はためらいなく花音の腰に手を回し、ソファの背にもたれながら彼女をそっと引き寄せた。
「ちょ……ちょっと……」
花音が戸惑うように抗議の声をあげる間もなく、匠はその耳元で囁いた。
「……今、誰もいない」
ミルクもその空気を察したのか、「にゃ」と一声鳴いてから、ソファの背を軽やかに飛び降りて、キャットタワーの上へと逃げていった。
「ねえ、ここ実家だよ……」
「うん。でも、我慢できない」
そう言って、匠は花音の顎にそっと指を添え、くいっと上を向かせた。
次の瞬間、触れるようなキスが落ちる。それはすぐに、角度を変えて、深く、長く重なっていく。
花音の指が無意識に匠の胸元を掴み、匠の指は彼女の髪の中に差し入れられる。
そして、首筋にふれるその指先が、何度も、優しく触れては離れた。
甘く、静かな、誰にも邪魔されないひとときが、早瀬家のリビングにそっと流れていた。
クッキーは素朴な形ながらも、口に入れればほろっと崩れて、優しいバターの風味が広がる。
由香里と博志の夫婦は、テレビのニュースにツッコミを入れたり、買い物の話をしたりしながら笑っていたが、花音はどこか浮かない様子で、口数が少ない。
匠はそんな様子を見て、ソファに座っていた花音の隣に腰を下ろすと、軽く笑いながら、彼女の頭を優しく撫でた。
「……なにその顔。さっきの玄関のこと、気にしてるの?」
花音は少し身を引きながら、目を丸くして言った。
「ちょっと……ご両親見てたでしょ……」
「見てたら、何?」
「やめてよ……」
そう言いながらも、花音は匠の手を取り、自分の頭から外そうとした。
しかしその仕草はどこか甘えにも似ていて、匠はますますニヤリとする。
その様子を見ていた由香里が、すかさず笑いながら声をかけてきた。
「もう、別にいいのよ? 私たちのこと気にしないで、ラブラブしてもらっても。ねえ、お父さん?」
「そうそう、若いっていいね~」
「……ちょっと、スーパーのタイムサービス行きたいの思い出した。花音ちゃん、ちょっと留守にするけどゆっくりしてて。お父さん、米買うから荷物持ちね。行くわよ」
「ええ~!? 草取り終わったばっかなのに……」
文句を言いながらも、博志はジャンパーに袖を通し、ボディバッグを肩にかけて玄関へと向かう。
由香里も軽やかな足取りでそれに続いた。
「いってきまーす」と玄関が閉まり、家の中が急に静かになった。
その瞬間、匠はためらいなく花音の腰に手を回し、ソファの背にもたれながら彼女をそっと引き寄せた。
「ちょ……ちょっと……」
花音が戸惑うように抗議の声をあげる間もなく、匠はその耳元で囁いた。
「……今、誰もいない」
ミルクもその空気を察したのか、「にゃ」と一声鳴いてから、ソファの背を軽やかに飛び降りて、キャットタワーの上へと逃げていった。
「ねえ、ここ実家だよ……」
「うん。でも、我慢できない」
そう言って、匠は花音の顎にそっと指を添え、くいっと上を向かせた。
次の瞬間、触れるようなキスが落ちる。それはすぐに、角度を変えて、深く、長く重なっていく。
花音の指が無意識に匠の胸元を掴み、匠の指は彼女の髪の中に差し入れられる。
そして、首筋にふれるその指先が、何度も、優しく触れては離れた。
甘く、静かな、誰にも邪魔されないひとときが、早瀬家のリビングにそっと流れていた。