眠れぬ夜は、優しすぎる刑事の腕の中で。
駐車場の端に立ち、無線を聞きながら現場の状況を見渡していた早瀬の目に、マンションの石段に座り込んだ花音の姿が入った。
顔を伏せ、膝の上にスマートフォンを置いたまま、肩をわずかに上下させている。
その隣に立っていた新田が、眉間にしわを寄せたまま言った。
「……あの子、大丈夫か?」
「母親に、何度も連絡を取っているようです」と早瀬は応えた。
だが、新田は鋭く首を横に振った。
「いや、見ろよ。肩で息してるだろ。呼吸、荒いぞ」
早瀬も改めて視線を凝らす。
たしかに、花音の背中がゆっくりと、でも不安定に揺れている。
目を閉じているようだった。
ふらふらと、軽く前後に揺れている。
言葉のやり取りはもう不要だった。
二人で自然と足が向かう。
「佐原さん?」
早瀬はしゃがみ込み、花音の顔を覗き込んだ。
彼女は何も言わず、ただうつむいたまま目を閉じていた。
返事も、微かなうなずきさえもない。
「おーい、佐原さん?」
新田がやや声を張った。
だが、花音の反応は薄かった。
早瀬はそっと彼女の腕に手を添えた。
その瞬間、思わず口をついて出た。
「……熱い」
彼女の肌は、外気以上に熱を帯びていた。
濡れたハンカチが首にかけられてはいたが、もはや焼け石に水だった。
「ダメだ、パトカーで冷やせ」
新田がすぐさま声を上げ、背後の若手に手招きする。
「こっち! 車、ドア開けとけ!」
早瀬は花音の腕を支え、彼女の身体をゆっくりと立ち上がらせようとする。
彼女の足はふらつき、ほとんど自分の体重を支えられていなかった。
「無理しないでください、すぐ車に――」
そう言いながら、早瀬は花音の体を少し自分に預けるようにしながら歩き出した。
こんなになるまで、ひとりで抱えていたのか。
そう思った瞬間、胸が締めつけられるように痛んだ。
早瀬はただ子どもを守りたいと思ってこの仕事をしている。
だが、今、彼が支えているのは、子どもを守ろうとして倒れかけている支援者の身体だった。
守らなきゃいけないのは、子どもだけじゃない。
暑さの中で響く、パトカーのドアが開く音。
冷房の風が待っている場所へ、早瀬は花音を静かに連れていった。
顔を伏せ、膝の上にスマートフォンを置いたまま、肩をわずかに上下させている。
その隣に立っていた新田が、眉間にしわを寄せたまま言った。
「……あの子、大丈夫か?」
「母親に、何度も連絡を取っているようです」と早瀬は応えた。
だが、新田は鋭く首を横に振った。
「いや、見ろよ。肩で息してるだろ。呼吸、荒いぞ」
早瀬も改めて視線を凝らす。
たしかに、花音の背中がゆっくりと、でも不安定に揺れている。
目を閉じているようだった。
ふらふらと、軽く前後に揺れている。
言葉のやり取りはもう不要だった。
二人で自然と足が向かう。
「佐原さん?」
早瀬はしゃがみ込み、花音の顔を覗き込んだ。
彼女は何も言わず、ただうつむいたまま目を閉じていた。
返事も、微かなうなずきさえもない。
「おーい、佐原さん?」
新田がやや声を張った。
だが、花音の反応は薄かった。
早瀬はそっと彼女の腕に手を添えた。
その瞬間、思わず口をついて出た。
「……熱い」
彼女の肌は、外気以上に熱を帯びていた。
濡れたハンカチが首にかけられてはいたが、もはや焼け石に水だった。
「ダメだ、パトカーで冷やせ」
新田がすぐさま声を上げ、背後の若手に手招きする。
「こっち! 車、ドア開けとけ!」
早瀬は花音の腕を支え、彼女の身体をゆっくりと立ち上がらせようとする。
彼女の足はふらつき、ほとんど自分の体重を支えられていなかった。
「無理しないでください、すぐ車に――」
そう言いながら、早瀬は花音の体を少し自分に預けるようにしながら歩き出した。
こんなになるまで、ひとりで抱えていたのか。
そう思った瞬間、胸が締めつけられるように痛んだ。
早瀬はただ子どもを守りたいと思ってこの仕事をしている。
だが、今、彼が支えているのは、子どもを守ろうとして倒れかけている支援者の身体だった。
守らなきゃいけないのは、子どもだけじゃない。
暑さの中で響く、パトカーのドアが開く音。
冷房の風が待っている場所へ、早瀬は花音を静かに連れていった。