眠れぬ夜は、優しすぎる刑事の腕の中で。
警察署の一室。
新田と早瀬は、それぞれ椅子に深く腰を預け、机の上に広げたファイルを眺めていた。

ときおり目を上げる先には、スマホを耳に当てながら淡々と電話をかけ続ける花音の姿があった。

朝岡への報告はすでに済んでいる。
花音が当直を続けること、そしてできるだけ早く日勤の管理職が児相に向かう手はずも整えられた。

今、彼女に託された任務はたった一つ。
川野美咲——児童の母親の所在を、一刻も早く突き止めることだけ。

何度目かの発信を終えたあと、花音はぽつりと呟いた。
「……ちょっと、サボってもいいですか。もう無理です」

そう言うと、机にドン、と音を立てて突っ伏した。

新田と早瀬は視線を交わし、ふっと笑みをこぼす。

「……俺たちもサボるか」

新田の言葉に、早瀬も続いて机に額を預けた。

蒸し暑く、長い夜のあと。
警察署の一角に、ようやくわずかな安堵の気配が流れた。
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