リアライズの殺人〜私は不仲のアイドルグループメンバーです。〜
私は仕方なく席の椅子に座り直すと、隣の胡兎はテーブルに片肘を乗せて手で頬を押さえ、複雑な顔で黙りこくっていた。
私も何も言えなかった。
やがて雫が戻ってきて、再び席に着くと、新しいドリンクを待ちながらまた話の続きを始める。
たった数分しか経っていないのに、雫の顔から泣いていた跡はすっかり消えて、いつも通りの穏やかな表情に戻っていた。
「…それからね、誤解が無いように言っておくけど、私は胡兎にも淳平君から離れるように、なんて絶対言わない。だから、安心して?ね?」
「え…?あ………、」
雫の発言に胡兎はバツが悪そうな表情になり、言葉に詰まっている様子。
雫と和哉君が別れたとしても、胡兎にも淳平君を諦めるように促さなくちゃならない理由は無い。