報復を最愛の君と
ベルス国の神
『これがカノン様との出会いでした』
そう懐かしむようにいうクラは、なんだか悲しそうに見えた。
もういないカノンという人との思い出を語るクラは、今どんな気持ちなのだろうと考えてしまった。
きっとそれは、私達から想像もつかないほど苦しいと思う。
だから、私に声をかけてきた時もあんな嬉しそうに…。
「それが初代三大能力者の人魚か。なぜ人間は能力者を制裁しようとしたんだ?」
『本当に理不尽な理由でした。人間とは違う容姿を持つ彼らを、悪魔としていたのです。きっといつか反逆をしてくると。私が襲われたのは、きっとやられる前に人間達と戦おうと能力者達が立ち上がったからなんでしょうね』
そんなひどい理由で、戦争が起こっていたのだ。
そんなの全部人間が悪いに決まってる。
理不尽に害悪と決めつけ、攻撃を始めて苦しめさせるなんて。
でも、一体誰が始めたのだろう。
「人間側の首謀者(しゅぼうしゃ)は分かりましたが、能力者側の首謀者は誰だったのですか?」
『…三大能力者の銀狼様と天竜様です』
「え?!三大能力者の人が首謀者なの…?じゃあ、カノンって人は?」
『カノン様と銀狼様、天竜様は対立していたのです。カノン様はとてもお優しく素晴らしいお方でしたが、他の2人は人間の絶滅を最初から狙っていたのです』
「そんな…」
確かに聞いている限りでは、カノンはとてもいい人だと思う。
善悪の判断をして指揮を取る。
まさにリーダーの理想そのもの。
でも、銀狼と天龍はそうではなかったってことかな。
「今は3人は何をしているの?三大能力者って寿命がないよね?」
『はい。寿命は存在しませんが、能力を使い果たせば消滅します。……カノン様は、お二方の手で殺されました』
「…っ」
仲間だったはずが、敵対したことで殺されてしまったんだ。
なんてひどい…。
『銀狼様と天竜様はまだ生きておられます。現在のベルス国の神として、人間の絶滅を狙っています』
「ソラ…ベルス国って能力者国の…だよね?」
「ああ、そんな国だなんて知らなかった」
ソラも驚いている。
城内でもベルス国の噂はよく聞いていた。
人間には厳しいが、とても優しい神が見守ってくださっている国だと。
けれど、実際はそんなことはなかったわけだ。
『私は彼らに復讐をします。カノン様にしたことを、倍返しにしてやる』
そう言ったクラの声は震えていた。
きっと怒りを必死に抑えようとしているのだろう。
「でも、クラはその姿では何もできないでしょう?」
『その通りです。けれど、人間に戻る方法がひとつだけあります。それは、人魚の血を再び体に入れること』
「人魚の血…って私?!」
その方法を聞いて私は驚く。
まさかそれで人間に戻れるなんて。
できることなら、クラの力にはなってあげたいと思うけど…。
「でも私、クラには復讐なんてしてほしくない。そんなことしたって苦しくなるだけだよ…」
『ですが…』
クラの不満そうな声をさえぎるようにしてルナが言った。
「復讐はよくないと思うけど…人間の姿に戻してあげたほうがいいと思う。このまま曖昧で過ごすのはよくないから。その2人とちゃんと話したほうがいい」
まるで自分のことを言うように言ったルナの言葉に、私達は息を呑んだ。
「……分かった。ルナがそう言うならクラに協力する。かわりに、私達にも協力して銀狼と天竜に会わせて。カノンの意思を私が継ぐよ」
きっと果たせなかったものがあったと思うから。
私も三大能力者の自覚を持って生きようと思った。
『ありがとうございます…』
私はうなずいてから指を噛み、自分の血をクラの口に落とした。
その血を飲み込んだ途端クラの体が発光して、私は思わず目をつぶった。
そう懐かしむようにいうクラは、なんだか悲しそうに見えた。
もういないカノンという人との思い出を語るクラは、今どんな気持ちなのだろうと考えてしまった。
きっとそれは、私達から想像もつかないほど苦しいと思う。
だから、私に声をかけてきた時もあんな嬉しそうに…。
「それが初代三大能力者の人魚か。なぜ人間は能力者を制裁しようとしたんだ?」
『本当に理不尽な理由でした。人間とは違う容姿を持つ彼らを、悪魔としていたのです。きっといつか反逆をしてくると。私が襲われたのは、きっとやられる前に人間達と戦おうと能力者達が立ち上がったからなんでしょうね』
そんなひどい理由で、戦争が起こっていたのだ。
そんなの全部人間が悪いに決まってる。
理不尽に害悪と決めつけ、攻撃を始めて苦しめさせるなんて。
でも、一体誰が始めたのだろう。
「人間側の首謀者(しゅぼうしゃ)は分かりましたが、能力者側の首謀者は誰だったのですか?」
『…三大能力者の銀狼様と天竜様です』
「え?!三大能力者の人が首謀者なの…?じゃあ、カノンって人は?」
『カノン様と銀狼様、天竜様は対立していたのです。カノン様はとてもお優しく素晴らしいお方でしたが、他の2人は人間の絶滅を最初から狙っていたのです』
「そんな…」
確かに聞いている限りでは、カノンはとてもいい人だと思う。
善悪の判断をして指揮を取る。
まさにリーダーの理想そのもの。
でも、銀狼と天龍はそうではなかったってことかな。
「今は3人は何をしているの?三大能力者って寿命がないよね?」
『はい。寿命は存在しませんが、能力を使い果たせば消滅します。……カノン様は、お二方の手で殺されました』
「…っ」
仲間だったはずが、敵対したことで殺されてしまったんだ。
なんてひどい…。
『銀狼様と天竜様はまだ生きておられます。現在のベルス国の神として、人間の絶滅を狙っています』
「ソラ…ベルス国って能力者国の…だよね?」
「ああ、そんな国だなんて知らなかった」
ソラも驚いている。
城内でもベルス国の噂はよく聞いていた。
人間には厳しいが、とても優しい神が見守ってくださっている国だと。
けれど、実際はそんなことはなかったわけだ。
『私は彼らに復讐をします。カノン様にしたことを、倍返しにしてやる』
そう言ったクラの声は震えていた。
きっと怒りを必死に抑えようとしているのだろう。
「でも、クラはその姿では何もできないでしょう?」
『その通りです。けれど、人間に戻る方法がひとつだけあります。それは、人魚の血を再び体に入れること』
「人魚の血…って私?!」
その方法を聞いて私は驚く。
まさかそれで人間に戻れるなんて。
できることなら、クラの力にはなってあげたいと思うけど…。
「でも私、クラには復讐なんてしてほしくない。そんなことしたって苦しくなるだけだよ…」
『ですが…』
クラの不満そうな声をさえぎるようにしてルナが言った。
「復讐はよくないと思うけど…人間の姿に戻してあげたほうがいいと思う。このまま曖昧で過ごすのはよくないから。その2人とちゃんと話したほうがいい」
まるで自分のことを言うように言ったルナの言葉に、私達は息を呑んだ。
「……分かった。ルナがそう言うならクラに協力する。かわりに、私達にも協力して銀狼と天竜に会わせて。カノンの意思を私が継ぐよ」
きっと果たせなかったものがあったと思うから。
私も三大能力者の自覚を持って生きようと思った。
『ありがとうございます…』
私はうなずいてから指を噛み、自分の血をクラの口に落とした。
その血を飲み込んだ途端クラの体が発光して、私は思わず目をつぶった。